受動喫煙対策として企業がやるべきことは?設置スペースが自由自在な喫煙ブースの活用を
従業員や顧客の健康を守るにあたって、企業がやらなければならないことの一つが、改正健康増進法に基づく「受動喫煙対策」です。非喫煙者も含めて喫煙者の周りの人が受動喫煙にさらされると、肺がんや脳卒中といった深刻な病気の発症リスクが高まります。
そこで今回は、受動喫煙がおよぼす悪影響を踏まえつつ、改正健康増進法の目的や施設ごとの分煙ルール、企業が取るべき受動喫煙対策や喫煙者の配慮義務について解説します。また、2025年4月から施行される「大阪府受動喫煙防止条例」の概要も併せて紹介するので、ぜひご一読ください。
受動喫煙がおよぼす悪影響は?
受動喫煙とは、タバコの点火部から立ち上る「副流煙」と喫煙者が吐き出す「呼出煙」を非喫煙者が吸わされてしまうことです。喫煙者が直接吸い込む「主流煙」と同じく、副流煙・呼出煙にも以下のような有害物質が含まれています。
● ニコチン
● タール
● 一酸化炭素
● ホルムアルデヒド
● アセトン
● アンモニア
● ベンゼン
● トルエン
参考:国立保健医療科学院『たばこの煙と受動喫煙 | e-ヘルスネット(厚生労働省)』
特に副流煙は主流煙に比べて有害物質の含有量が多く、比率で見ると数十倍以上になるケースも珍しくありません。つまり、受動喫煙が発生している状況において、非喫煙者は喫煙者より有害な煙を望まずに吸っているということです。
受動喫煙によって有害物質を取り込んでしまうと、以下のような悪影響が生じます。
◇がん
副流煙にはタールをはじめ、さまざまな発がん性物質が含まれています。タバコとの関連性が高いがんというと「肺がん」が有名ですが、これは受動喫煙でも同様です。
その他にも鼻腔がん・咽頭がん・食道がん・乳がんなど、多くのがんの発症リスクを高めるので、周囲に喫煙者がいる方にとっては深刻な問題といえるでしょう。
◇呼吸器疾患
受動喫煙にさらされた場合、呼吸器疾患の発症リスクも増大します。特に関連性が高いものは「喘息」と「COPD」です。
喘息はアレルギー反応による病気の一種で、タバコの煙に含まれる有害物質がアレルゲンや刺激となり、せき・たん・呼吸機能低下などの症状を引き起こします。
一方、COPDは「慢性閉塞性肺疾患」という病気です。喫煙習慣が原因で起こるので「たばこ病」「肺の生活習慣病」とも呼ばれていますが受動喫煙によっても発症します。
COPDにかかると少し動いただけでも息切れしやすくなりますが、これはあくまで初期症状です。症状が進行した場合、安静にしていても息苦しくなったり、酸素ボンベがないと日常生活を送れなくなったりする可能性もあります。
また、COPDによって破壊された肺の組織は二度と元に戻らないため、今後の人生にも多大な悪影響をもたらしてしまう病気です。さらに、新型コロナウイルスなどによる感染症の重症化リスクも高まってしまいます。
◇循環器疾患
タバコの煙を吸い続けると、血管の収縮によって血流が悪化したり、動脈硬化で血管が詰まったりしやすくなります。その結果、心筋梗塞・狭心症・脳梗塞・くも膜下出血など、循環器疾患の発症リスクも高まってしまうのです。
健康状態や年齢にもよりますが、循環器疾患にかかると命を落としてしまうケースも少なくありません。一命を取り留めたとしても、重い後遺症を抱えてしまう可能性があります。
◇妊婦・乳幼児への健康被害
受動喫煙による健康被害は老若男女問わず発生しますが、特に妊婦・乳幼児に対するダメージは深刻です。
例えば、妊婦なら早産や流産が起こりやすくなるうえ、お腹のなかにいる胎児の発育にも悪影響をもたらします。妊婦本人が非喫煙者であっても、周囲の喫煙者が発する煙を吸い込んでしまえば、同様のリスクにさらされてしまうのです。
そして、乳幼児が副流煙を吸うと呼吸器疾患や中耳炎のほか、元気だった赤ちゃんが睡眠中に突然亡くなる「SIDS(乳幼児突然死症候群)」の発症リスクが高まるといわれています。
また、乳幼児の受動喫煙に関しては、成人後に起こる肺機能低下やメタボリックシンドロームと関連性があることも判明しています。
改正健康増進法が示す受動喫煙対策
健康増進法とは、国民の健康増進を図るための法律です。2018年7月にその一部を改正した「改正健康増進法」が成立し、2020年4月1日から全面施行されています。
この改正健康増進法の目的と改正ポイントをまとめたので、前提知識として押さえておきましょう。
◇改正健康増進法の目的
改正健康増進法のおもな目的は、「望まない受動喫煙をなくすこと」です。受動喫煙がもたらす健康被害と喫煙者が一定数いる現状を踏まえて、屋内で受動喫煙を望まない人がその環境下に置かれないよう働きかけます。
また、この目的に関連する基本的な考え方として、以下のような内容も提示されています。
・受動喫煙の影響が大きい子どもや病人への配慮を徹底する
・施設の類型・場所ごとに必要な対策を講ずる
受動喫煙を防ぐための取り組みは改正前から実施されていましたが、あくまで「マナー」という位置付けでした。しかし、法改正によって受動喫煙対策は「ルール」へと変わり、企業が果たすべき義務となっています。
義務に違反した場合、罰則が科される可能性もあるため、どのようなルールが規定されているのか把握しておくことが大切です。
◇4つの改正ポイント
改正健康増進法では、以下の4つのルールが規定されています。
・屋内は原則禁煙
オフィス、飲食店、宿泊施設、鉄道駅など、多くの人々が利用する施設は、原則として屋内禁煙となります。ただし、施設によっては屋外も含めて禁煙になったり、条件を満たすと屋内での喫煙が認められたりするため、ルールをしっかり確認しておきたいところです。
・喫煙室の設置
屋内での喫煙が認められるケースでは、あらかじめ喫煙室を設置することが必須条件です。施設や事業内容の違いを踏まえて、喫煙室は以下の4つに分類されています。
・喫煙専用室
・加熱式タバコ専用喫煙室
・喫煙目的室
・喫煙可能室
詳細は後述しますが、それぞれ用途や設置基準が異なるため、設置の際には十分に注意しましょう。
・20歳未満は喫煙エリアへの立入禁止
20歳未満の人については、会話や清掃など喫煙以外の目的であっても、喫煙エリアに立ち入ることは一切禁止されています。該当施設で働く従業員も対象に含まれているため、ルールの周知徹底が欠かせません。
・喫煙室の標識掲示義務
喫煙室を設置する場合、その場所が喫煙室だとわかるよう、指定された標識を掲示することが義務付けられています。汚損した標識や紛らわしい標識は罰則対象になりえるので、注意しましょう。
◇2025年4月に大阪府受動喫煙防止条例 全面施行
大阪府は2025年開催の「大阪万博」を見据えて、独自に「大阪府受動喫煙防止条例」を2019年3月に制定しました。こちらは2025年4月から全面施行となりますが、前述の改正健康増進法より「客席面積」に関する基準が厳しくなっています。
● 改正健康増進法:客席面積100平方メートル以下
● 大阪府受動喫煙防止条例:客席面積30平方メートル超、100平方メートル以下
また、大阪市では、2025年1月から市内全域を対象に路上喫煙を禁止する取り組み(大阪市路上喫煙の防止に関する条例の改正)が進められていることも押さえるべきポイントです。こちらは路上喫煙対策に向けた改正条例で、喫煙所の新設なども並行する形で進められています。
各事業者は従業員が外の禁止エリアで喫煙しないよう、今まで以上に企業モラル・コンプライアンスを重視する必要があります。
施設ごとの分煙ルール
改正健康増進法では、非喫煙者と喫煙者どちらの権利も守られるよう「分煙」を推進しています。喫煙率が低下傾向にあるとはいえ、タバコを愛好する人はまだまだ多いため、非喫煙者と共存できる環境をつくることが重要です。
そこで、施設ごとの分煙ルールを解説するので、ぜひチェックしてみてください。
◇学校・医療機関・児童福祉施設等(第一種施設)
子どもたちが通う学校や児童福祉施設、病院やクリニックといった医療機関、行政機関の庁舎は第一種施設に指定されています。
この第一種施設は公共性が高く、受動喫煙の悪影響を受けやすい子どもや病人が多く集まるため、最も規制が強い「敷地内禁煙」が原則です。この「敷地内禁煙」には屋外も含まれますが、一定の条件を満たせば屋外に喫煙所を設置することはできます。
◇オフィス・店舗等の施設(第二種施設)
企業のオフィスや工場のほか、飲食店や鉄道駅などは第二種施設に指定されています。
第二種施設についても不特定多数の人が利用するため、原則として屋内禁煙です。ただし、一定の条件を満たせば、屋内に「喫煙専用室」または「加熱式タバコ専用喫煙室」を設置することができます。
喫煙専用室は「タバコを吸うためだけ」に設けるスペースなので、飲食や会議といった喫煙以外の目的では利用できません。
加熱式タバコ専用喫煙室は、その名のとおり「加熱式タバコを吸うため」のスペースです。紙巻タバコの喫煙はできませんが、飲食などは認められています。
◇小規模な飲食店(既存特定飲食提供施設)
個人経営の食堂やカフェなど、小規模な飲食店についても第二種施設に該当するので、原則は「屋内禁煙」となります。
しかし、以下の条件を満たす既存特定飲食提供施設の場合、経過措置として屋内に「喫煙可能室」を設置することが認められています。
【既存特定飲食提供施設】
・2020年4月1日より前に開業している
・資本金が5,000万円以下
・客席面積100平方メートル以下
(※大阪府は2025年4月1日以降なら客席面積が30平方メートル超え100平方メートル以下が対象)
喫煙可能室は「タバコが吸える」スペースという位置付けなので、喫煙に加えて飲食なども可能です。また、店全体を喫煙可能室として運営することもできます。
◇バーやスナック(喫煙目的施設)
バーやスナックについては、以下の要件を満たすと「喫煙目的施設」という扱いになります。
・タバコの対面販売をしている
・主食として認められる食事(米・麺類など)を提供していない
なお、タバコの対面販売をするには、タバコの小売販売業の許可を受けている必要があります。タバコを仕入れて転売している場合は、タバコの対面販売には該当しない点に注意が必要です。
また、喫煙目的施設では、喫煙と主食を除いた飲食ができる「喫煙目的室」を屋内に設置することが可能で、店全体を喫煙目的室にすることもできます。
◇宿泊施設の場合
ホテルや旅館といった宿泊施設の「客室」については、改正健康増進法の適用が除外されているので、施設管理者の判断によって喫煙・禁煙を決めることができます。
ただし、ロビーやレストランといった共有部分は「屋内禁煙」が原則です。
企業が取るべき受動喫煙の対策
企業が行なうべき受動喫煙対策は、施設や事業内容によって変わってきます。
オフィスや事業所であれば、まずは従業員の喫煙状況を把握することが先決です。その結果を踏まえて、喫煙室の設置場所や設備などを検討しましょう。
また、飲食店や宿泊施設であれば、国や自治体から受動喫煙対策の助成金が出ることもあります。喫煙室の設置などにかかる費用の一部をカバーしてもらえるため、ぜひ活用したいところです。
◇企業が義務違反をした場合
企業が改正健康増進法で定められた義務に違反した場合、まずは行政から指導が入ります。指導しても改善が見られない場合、より強く対応を勧める勧告や命令が通達されるという流れです。
勧告や命令を受けても違反事項が改善されないときは、「社名公表」の罰則が下され、その後の採用や取引に大きなダメージを及ぼすことが想定されます。それでも尚、改善が見られない場合は最終的に違反者への罰則として50万円以下の過料が科せられることになります。
◇義務を果たす困難さ
受動喫煙対策として喫煙室を設置する場合、以下のような技術的基準を満たす必要があります。
・出入口(室外から室内へと流れる空気)の風速が0.2m毎秒以上ある
・煙が外に漏れないよう天井や壁が区画されている
・煙が屋外へと排気されている
さらに、3ヵ月ごとの風速計測および3年間の計測結果レポート保管という義務も発生します。喫煙室の排気口が汚れると風速も落ちるため、こまめに清掃しなければなりません。
このような義務を果たすことは困難をともないますが、クリーンエア・スカンジナビアの「喫煙ブース」なら上記でご紹介した技術的基準をすでに満たしており、簡単に設置することが可能です。
喫煙者の配慮義務もある
屋外や私有地での喫煙は禁煙特定区域を除けば、改正健康増進法における規制が適用されません。しかし、喫煙が禁止されていないエリアであっても、喫煙者は受動喫煙を生じさせることがないよう周囲に配慮する義務があります。
喫煙者の従業員がいる場合、事業者からも適切な指導を行ないたいところです。「人通りが多い場所で吸わない」「近隣に煙が広がらないようにする」など、配慮を徹底しましょう。
受動喫煙防止にはクリーンエア・スカンジナビアの喫煙ブースを
クリーンエア・スカンジナビアでは、後付け型の喫煙ブースを提供しています。クリーンエア・スカンジナビアの喫煙ブースのおもな特徴は、以下のとおりです。
・100Vのアース付き電源と空きスペースさえあれば、屋内のどこにでも設置できる
・喫煙室と異なり、新しい部屋を確保する必要がない
・大規模な工事は不要で、余計な費用と時間がかからない
・タバコの煙が拡散する前に捕集して、特殊フィルターでほぼ100%浄化できる
・改正健康増進法に基づいた室内の風速の計測、法律要件を満たしている旨を証明するレポート作成も追加料金なしで対応が可能
・定期メンテナンスを実施しており、いつも快適な環境を維持できる
・屋外排気に関してもご相談可能
屋外排気に関する事例はこちら
受動喫煙対策にも大いに役立ちますので、分煙対策に取り組む企業担当者の方は、ぜひ一度下記リンクをご確認ください。
詳しくはこちら
まとめ
改正健康増進法の施行により、企業での受動喫煙対策は義務化されました。改正健康増進法の順守は、従業員や顧客の健康を守るという点においても非常に重要であるため、施設の類型や喫煙状況を踏まえつつ、早めに対策を講じたいところです。
「スペースや予算、時間の関係で喫煙室の設置が難しい」「日々のメンテナンスに時間をかけたくない」という場合には、ぜひクリーンエア・スカンジナビアの喫煙ブースをご検討ください。
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