人や環境にやさしい素材の開発。hap株式会社にインタビュー
クリーンエア・スカンジナビアは、SDGsに関する取り組みとして、サステイナブル・カンパニーを目指しています。
持続可能な発展への貢献。環境負荷削減のための責任ある行動。そして自社のバリューチェーンにおいて人々へのポジティブな効果を高めていくこと。私たちクリーンエアでは、こうした活動に取り組んで参ります。
この記事では、同様にSDGsの取り組みを行っている企業をインタビュー形式で紹介します。
hap株式会社は、2006年に創業したアパレルメーカーです。人や環境に配慮した機能性素材「COVEROSS®(カバロス)」の開発を展開しており、第11回技術経営・イノベーション大賞で「カバロスのサーキュラーファッション」が内閣総理大臣賞を受賞しました。
今回は、世の中に貢献するために「世界で初めての機能性素材」の開発に取り組まれている、同社の代表取締役社長 鈴木素さんにお話を伺いました。
人や環境に配慮した素材開発を行う、hap株式会社
―本日はよろしくお願いします。まず御社の沿革や主な事業内容を教えてください。
鈴木さん(以下、鈴木):当社は2006年に東京都中央区で創業したアパレル会社です。基本的には、アパレルブランド向けのデザイン企画・提案から生産までを一貫して担当するODM業務を行っています。
ミッションには、「ファッションを通じて、ステークホルダーの“笑顔”を生産する」を掲げ、「COVEROSS®(カバロス)」という人や環境に配慮した機能性素材の開発・販売にも注力して取り組んでおり、社会に貢献できる企業を目指しています。
―COVEROSS®の開発に至る経緯を教えてください。
鈴木:昔から、アパレル業界は石油業界の次に環境負荷が高いと言われています。私自身、前職である繊維商社で働いているときに、服の生産現場で子どもたちが働かされていたり、薬剤が垂れ流されていたりする状況を見てきました。
この状況は、当社を創業した2006年以降も変わっておらず、「アパレル業界の普通」として続いているのはおかしいと感じています。そこで、当社では「環境や人にやさしい服づくり」を目指して、できることを一つずつ進めていく方針を進めているところです。
服を長く着てもらうために
―COVEROSS®の概要を教えてください。
鈴木:機能面の充実を追求するだけでなく、安く販売するための強制労働や環境に配慮しないものづくりはせず、人権やサスティナビリティに配慮して製造することを大切にしてきたCOVEROSS®の開発コンセプトは、「家族や大切な人が本当に着たいと思ってくれる素材・製品をつくる」です。
着心地も追求して開発したCOVEROSS®には、素材・製品だけでなく、既製品に後加工であらゆる機能性を付与できる技術も開発しているので、アップサイクルをして服を長く大切に着ていただける一助となりたいと考えています。
「こんな素材があったらいいな」を実現する
―COVEROSS®のシリーズにはいくつか種類があると伺いました。詳しく教えていただけますか?
鈴木:COVEROSS®WIZZARD(カバロスウィザード)という素材がありますが、WIZZARD(魔法の)という言葉の通り、「こんな素材があったらいいな」と思う機能性を複合的につけているものです。
例えば、汗を分解する機能や臭わない機能をつけているので、洗濯せずに何日も着ていただくことができますし、グレーの服であっても汗染みが目立ちにくい機能なども付いています。
実際に、私はこの素材のTシャツ1枚で真夏のインドネシア出張へ10回以上も行っていますね。着替えを最小限に抑えることができるので、スーツケースを持っていく必要がなく、リュックで身軽に動けるので大変助かっています。
―後加工で機能性をつけられるサービスとはどのようなものでしょうか?
鈴木:服のアップサイクルに興味を持ってもらうために、「誰かに話したくなるアップサイクル」をテーマとして「選べる機能性シリーズ」というサービスを開発しました。
服の染め直し・白い服を透けにくくする・汚れにくくするなどの10種類の機能を既製服に付けることができ、服を長く快適に着ていただく手助けを行っています。今後、「選べる機能性シリーズ」のプレスリリースを体外的に行う予定ですが、すでにたくさんの注文をいただいおり、好評をいただいているところです。
―開発するなかで苦労されたことはありますか?
鈴木:当社では「世界中のどこにもないものをつくる」ことを目指して開発していますが、「世界で初めて」ということは基準が世の中にないということです。
そのため、「本当にこういう機能を付与できる」という効果を提示する必要があります。権威のある方たちと共同研究を行い、論文等で発表していただくことで機能の信頼性を証明する工程も必要になるなど、素材開発以外での苦労もありますね。
「どう世の中に普及させていくのか」という課題もありますが、たくさんの方に知っていただき、地球環境に貢献していきたいと考えているので今後も精力的に活動していきます。
アパレル業界が環境への配慮に挑む
―「人や環境にやさしい機能」のアイデアはどのように出されているのでしょうか?
鈴木:アパレル業界は、服を生産するなかで環境に大きく負荷をかけています。それを少しでも改善したいと思い、「どうしたらアパレル業界が世の中に貢献することができるのか?」という目線から、世界の情勢を見て必要な機能を検討することが多いですね。
例えばコロナ禍においては、「抗菌・抗ウイルス」の素材や服が必要です。また家で過ごす時間が増えると精神的にも負荷がかかってしまうでしょう。その場合には、「気持ちを整える機能」を開発します。
現在は水がいつなくなってしまうかわかりませんよね。皆さんが日常的に行っている洗濯は一度に約100Lの水を使用するので、服の機能で「洗濯回数を減らせるもの」を開発すれば環境に貢献できると考えました。
具体的には、服自体が汗を分解することで着心地の良さを保ったり、匂いを抑えたりする機能が挙げられるので、そこを目指して研究を重ねていくという流れです。
近年は自然災害が増えているので、「洗濯しなくても良い服」というのはあらゆる場面で今後需要が増えてくるのではないでしょうか。
絶対に捨てない服をつくりたい
―今後のご計画や注力されることについて教えてください。
鈴木:服は使えば使うほど価値が下がってしまうというのが一般的ですが、そのような「作って、売って、捨てる」というアパレル業界のビジネスモデル自体を変え、リユースする価値のある服づくりに注力していきます。
例えば、服が話したり、毎日の体調を教えてくれたりと、スマートフォンのように着る人に合わせた対応が取れる服などを作っていきたいですね。ハイテクな服ですが、服に対して愛情を注げる人は増えるではないでしょうか。修理してでも着たいと思っていただける、「絶対に捨てない服」を目指していきたいです。
―読者の方に向けてメッセージをお願いします。
鈴木:「SDGsに関する問題は難しい」と捉える方もいらっしゃると思いますが、服を通して取り組むことで、ワクワクとした楽しい気持ちで参加できるようにしていきたいと思います。皆さんも一緒に取り組んでいきましょう。
―本日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
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