綺麗な海を子ども達に残すため海洋ゴミ問題に取り組む。株式会社SUSTAINABLE JAPANにインタビュー!

綺麗な海を子ども達に残すため海洋ゴミ問題に取り組む。株式会社SUSTAINABLE JAPANにインタビュー!

クリーンエア・スカンジナビアは、SDGsに関する取り組みとして、サステイナブル・カンパニーを目指しています。

持続可能な発展への貢献。環境負荷削減のための責任ある行動。そして自社のバリューチェーンにおいて人々へのポジティブな効果を高めていくこと。私たちクリーンエアでは、こうした活動に取り組んで参ります。この記事では、同様にSDGsの取り組みを行っている企業をインタビュー形式で紹介します。

株式会社SUSTAINABLE JAPANは、熊本県を拠点に海洋ごみ問題の解決に取り組む企業です。オーストラリアで開発された、海洋浮遊ゴミ回収機SEABIN(シービン)の販売代理事業を手掛けるほか、国内の用排水路専用ゴミ回収機「SEETHLIVER(シースリバー)」を自社で開発、販売開始に向けて事業を展開しています。

同社の代表取締役社長 東濵孝明さんに、SUSTAINABLE JAPANの取り組みについて伺いました。

海を綺麗にする会社「株式会社SUSTAINABLE JAPAN」



―本日はよろしくお願いします。早速ですが、株式会社SUSTAINABLE JAPANについて教えてください。

東濵さん(以下、東濵):弊社は、2019年1月に熊本県熊本市に設立した会社です。主に、海洋保全活動を軸とした事業を展開しています。

具体的には、オーストラリアで開発された海洋浮遊ゴミ回収機SEABIN(シービン)という機械の国内販売代理事業と、自社で開発した用水路専用のゴミ回収機SEETHLIVER(シースリバー)の製造販売ですね。「海を綺麗にする会社」と捉えていただけたらと思います。


―ありがとうございます。SEABIN(シービン)について詳しく教えていただけますか?

東濵:シービンは2014年にオーストラリアのサーファー2人が開発した、海遊浮遊ゴミを自動で回収する装置です。装置の仕組みはシンプルで、例えば、お風呂の中で手桶を浮かべて、少し沈めると水が流れ込んできます。この構造と同じように海の上に浮かべたシービンを少し沈めて海水と共に浮遊するゴミを回収し、シービンのなかにゴミだけを溜めて、海水だけを外に吐き出すような構造です。シービンは、1回で最大20キロの浮遊ゴミを回収することができます。


―シービンは世界中で普及しているものなのでしょうか?

東濵:世界での導入実績は860台ほどといわれています。弊社が設立した2019年頃から日本国内で流通し始めたように記憶していますが、国内では約30台に満たないくらいでしょうか。海に囲まれる島国としては、まだまだ普及しているとは言い難い状況ですね。

海洋ゴミ問題に興味がある方やビーチクリーン活動に参加された方には知られていますが、一般的な認知度というとやはり低いのだと思います。


―どのような企業・団体がシービンを導入するのでしょう。

東濵:主に自治体の方が多いですね。シービンは漁港やマリーナ、ヨットクラブなどに設置しますが、そういった施設を管理しているのが自治体なので。東京では、マリーナを所有する企業が導入された事例もあります。

国内で初めてシービンを導入されたのは神奈川県の江ノ島ですね。江ノ島マリーナに3台設置されています。東京オリンピックのセーリング会場だったこともあり、競技環境整備のために導入されたそうです。

用排水路専用ゴミ回収機「SEETHLIVER(シースリバー)」を自社開発!



―自社で開発した用水路用の装置もあるそうですね。

東濵:用排水路専用ゴミ回収機「SEETHLIVER(シースリバー)」を自社で開発し、現在販売に向けて準備を進めているところです。海洋ゴミの8割は人が住む街から流れ出るといわれています。ゴミが用水路や河川から海に流れ出てしまうことを防ぐために開発しました。


―シースリバーの開発経緯を教えてください。

東濵:弊社の事業を熊本の新聞社に取り上げていただいたことがあります。それを見た熊本の米農家さんから「シービンを用水路に設置したい」と問い合わせがありました。

用水路は生活ゴミも流れてきますし、米農家の方が使用する肥料のひとつに「プラスチック被覆肥料」というものがあります。徐々に肥料が溶け出すように作られているので、無駄がなく農家の方の手間も省けるというメリットがある一方で、使用後の被膜殻がプラスチックゴミとして用水路を通って海まで流れ出てしまうことが懸念されています。

そういった背景もあり、問い合わせを受けてシービンを用水路に設置してみたのですが、設置した3日後には用水路の水位が低くなっていて稼働できない状態でした。シービンは海で使うように設計されているので、最低でも1.2メートルほどの水位が無いとうまく稼働できません。

これでは年間を通してゴミを回収できないということで、用水路用のものを開発することにしました。それがちょうど2年半ほど前(2021年)ですね。


―シースリバーはシービンの構造を応用して設計されたのでしょうか?

東濵:実は、シービンとは全く違うものなんです。ゴミを回収する機能は同じですが構造は全く別物ですね。開発から実用化まで2年半ほどかかり、つい最近ようやく販売の目処が立ちました。今は販売に向けて準備を進めているところです。

新しい機器の開発というと、通常は製造会社に委託すると思いますが、弊社の場合はホームセンターで購入した材料から何度も試作を繰り返して作りました。

大きなビニールプールを買って、試作機を浮かべて実験しては改良しての繰り返しでしたね。試作段階では重量が大きすぎて設置コストと見合わないなどの課題もたくさん出てきました。企業に委託すればもっと早く完成していたのかもしれませんが、自分自身で何度も試行錯誤して作ったものなので、その分思い入れもありますね。

プロトタイプは自分で作りましたが、商品化の際に製造会社に委託して製造してもらっていて、現在熊本県内で2つの受注先が決まっています。

農林水産省の基準を満たせば、設置の際の交付金制度も利用できるので農家の方は費用負担なく導入いただけます。

幼少期に過ごした綺麗な海を取り戻したいと起業を決意



―これから大きな注目を集めそうですね。東濵さんご自身が海洋ゴミ問題に興味を持ったきっかけは、何かあったのでしょうか?

東濵:私の母親が熊本市の西区にある港町の出身でした。幼少期によく祖父母と海で遊んでいたのですが、とても綺麗な海だったと記憶しています。二十歳になり東京に出て、三十歳のとき結婚と同時に熊本に戻り、久しぶりに訪れた海がとても汚れていて。自分自身の記憶とあまりに違っていたので衝撃を受けました。

そこから海洋ゴミ問題に興味を持ち、ビーチクリーン活動を始めたのがきっかけです。数時間かけてビーチのゴミを拾っても、また次にビーチに行くとゴミでいっぱいになっている。ビーチクリーン活動を通して、より海洋ゴミ問題の深刻さに危機感を覚えました。

もっと効率良く、たくさんゴミを回収できる方法はないかと調べていたときに見つけたのがシービンです。


―そこからどのような経緯で起業に至ったのでしょう?

東濵:今でこそ、シービンの日本語記事がたくさんありますが、当時はほとんど英語の情報ばかりで。翻訳しながら情報を集め、シービンプロジェクトに「シービンを購入したい」とメールを送りました。結果的には、個人への販売はできないということで断られてしまったのですが、日本で私のほかにアプローチをしている企業があると教えてもらいました。

その企業にも問い合わせたものの、やはり法人格でないと取引が難しいとのことで、会社設立を決意しました。会社を作らないことには、シービンが手元に来ないのだと。とにかく早くシービンを設置したい一心でしたね。


―海洋ゴミ問題に向き合うなかで、周りの変化や反響はありましたか?

東濵:子ども達のために綺麗な海を残したいという思いで活動していますが、本当に多くの方が賛同くださっていて。協力してくれる方が増えていくところにやりがいを感じています。

会社としては実績不足ですが、自社製品のシースリバーができたことでさらに事業の幅を広げていけたらと思います。もちろん会社として事業を継続するために装置を販売しますが、根本的な目的は「綺麗な海を次の世代に残すこと」です。

繰り返しになりますが、海洋ゴミの8割が人の住む街中から流れ出ているものです。ゴミを海に流さないための活動がより世の中に広がればと思います。

海洋ゴミ問題に興味を持つことから始めてほしい

―今後の展望についてお聞かせください。

東濵:まずはシースリバーの認知普及に注力できればと考えています。シースリバーを通して、海洋ゴミ問題に興味や関心を持っていただけたら嬉しいです。全国に海を綺麗にしたいと思う人が増えると良いなと思います。


―最後に、SDGsに関心のある方へ向けてメッセージをお願いします。

東濵:最近はポイ捨てなど少ないですが、カラスがゴミを荒らしてしまったり風や雨でゴミが用水路に流れてしまったり、街中のゴミを目にすることも少なくないと思います。

街中に落ちているゴミを見つけたら拾うだけでも海まで流れ出るゴミは減るのではないでしょうか。海洋ゴミ問題に限らず、環境問題は一人ひとりの意識や行動で大きく変わると実感しています。

本当に小さな意識の変化から、日常の行動は変わります。少しでも多くの人に海洋ゴミ問題に興味を持ってもらうことで解決に向かえば嬉しいですね。


―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。