有機溶剤の有害性と対策!健康被害を回避するためにできること

有機溶剤の有害性と対策!健康被害を回避するためにできること

有機溶剤は工業的に有用であるため、さまざまな分野で使用されています。

一方で、人体に吸収されやすい性質をもち、大量に吸収すると重篤な健康障害を引き起こすため、取り扱いには細心の注意が必要です。そのため、有機溶剤を安全に扱えるように、労働安全衛生法などに基づいて有機溶剤中毒予防規則(以降、有機則)が規定されています。

この記事では、有機則で規定されている内容を中心に、有機溶剤の種類と有害性、健康被害への対策などについて解説します。

有機溶剤とは

有機溶剤とは、ほかの物質を溶かす性質をもった有機化合物の総称であり、さまざまな職場で溶剤として、塗装・洗浄・印刷などの作業に幅広く使用されています。

有機溶剤は常温だと液体ですが、その揮発性の高さから、蒸気になって人体に吸収されやすい傾向にあります。さらに、油脂に溶ける性質があることから、皮膚からも吸収されます。

参考:有機溶剤を正しく使いましょう|厚生労働省


◇有機溶剤「第1種」「第2種」「第3種」の違いは?
有機溶剤は、蒸発速度と毒性から有害度が設定され、有害度の強いものから順に「第1種」「第2種」「第3種」の3つに区分されています。

それぞれの扱い方や対策はこの区分にしたがって異なるため、注意しましょう。


◇有機溶剤の種類一覧
有機溶剤には多くの種類がありますが、有機則の対象となる物質は54種類あり、第1種から第3種に区分されています。

・第1種有機溶剤

物質名 CAS No 沸点 参考IARC がん原性指針
クロロホルム 67-66-3 62℃ 2B
四塩化炭素 56-23-5 77℃ 2B
1,2-ジクロルエタン(別名二塩化エチレン) 107-06-2 84℃ 2B
1,2-ジクロルエチレン(別名二塩化アセチレン) 540-59-0 60℃
1,1,2,2-テトラクロルエタン(別名四塩化アセチレン) 79-34-5 146℃ 3
トリクロルエチレン 79-01-6 87℃ 2A
二硫化炭素 75-15-0 46℃

・第2種有機溶剤      
物質名 CAS No 沸点 参考IARC がん原性指針
アセトン 67-64-1 56℃
イソブチルアルコール 78-83-1 108℃
イソプロピルアルコール 67-63-0 83℃ 3
イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール) 123-51-3 132℃
エチルエーテル 60-29-7 35℃
エチレングリコールモノエチルエーテル(別名セロソルブ) 110-80-5 135℃
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名セロソルブアセテート) 111-15-9 156℃
エチレングリコールモノ‐ノルマル‐ブチルエーテル(別名ブチルセロソルブ) 111-76-2 171℃ 3
エチレングリコールモノメチルエーテル(別名メチルセロソルブ) 109-86-4 125℃
オルト-ジクロルベンゼン 95-50-1 180℃ 3
キシレン 1330-20-7 138℃ 3
クレゾール 1319-77-3 191℃
クロルベンゼン 108-90-7 132℃
酢酸イソブチル 110-19-0 118℃
酢酸イソプロピル 108-21-4 89℃
酢酸イソペンチル(別名酢酸イソアミル) 123-92-2 142℃
酢酸エチル 141-78-6 77℃
酢酸ノルマル-ブチル 123-86-4 126℃
酢酸ノルマル-プロピル 109-60-4 102℃
酢酸ノルマル-ペンチル(別名酢酸ノルマル-アミル) 628-63-7 149℃
酢酸メチル 79-20-9 57℃
シクロヘキサノール 108-93-0 161℃
シクロヘキサノン 108-94-1 156℃ 3
1,4-ジオキサン 123-91-1 101℃ 2B
ジクロルメタン(別名二塩化メチレン) 75-09-2 40℃ 2B
N,N-ジメチルホルムアミド 68-12-2 153℃ 3
スチレン 100-42-5 145℃ 2B
テトラクロルエチレン(別名パークロルエチレン) 127-18-4 121℃ 2A
テトラヒドロフラン 109-99-9 66℃
1,1,1-トリクロルエタン 71-55-6 74℃ 3
トルエン 108-88-3 111℃ 3
ノルマルヘキサン 110-54-3 69℃
1-ブタノール 71-36-3 117℃
2-ブタノール 78-92-2 100℃
メタノール 67-56-1 65℃
メチルイソブチルケトン 108-10-1 117℃ 2B
メチルエチルケトン 78-93-3 80℃
メチルシクロヘキサノール 25639-42-3 174℃
メチルシクロヘキサノン 1331-22-2 163℃
メチル-ノルマル-ブチルケトン 591-78-6 126℃

・第3種有機溶剤
物質名 沸点 参考IARC がん原性指針
ガソリン 38~204℃ 2B
コールタールナフサ(ソルベントナフサを含む。) 120~200℃
石油エーテル 35~60℃
石油ナフサ 30~170℃
石油ベンジン 50~90℃
テレビン油 149℃
ミネラルスピリット(ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリット、ホワイトスピリットおよびミネラルターペンを含む) 130~200℃

参考:有機溶剤を正しく使いましょう|厚生労働省

有機溶剤の有害性



有機溶剤を慢性的に使用すると、以下のような健康障害を引き起こします。

ほとんどの有機溶剤使用時に共通する症状
● 中枢神経系の麻酔作用:頭痛・めまい・神経障害
● 皮膚・粘膜への刺激:皮膚の亀裂・湿疹・咳・結膜炎

個別の物質による症状
● ベンゼン:造血器障害による貧血
● メタノール:視神経障害による視力低下
● 二硫化炭素:精神障害、多発性神経炎
● ノルマルヘキサン:末梢神経障害
● トリクロロメタン・ジクロロプロパン:発がん性


◇有機溶剤で体調不良を起こした場合の対処法
有機溶剤による中毒が発生したときの応急措置については、厚生労働省などから次のような内容を掲示するように通達されています。

● 中毒にかかった人をすぐに風通しの良い場所に移し、速やかに衛生管理者やその他の衛生管理担当者に連絡する
● 中毒にかかった人を横向きに寝かせ、気道を確保した状態※で、身体の保温に努める
● 中毒にかかった人が意識を失っている場合は、消防機関へ通報する
● 中毒にかかった人の呼吸が止まった場合や正常でない場合は、速やかに仰向きにして心肺蘇生を行う
※回復体位
横向きに寝かせ、できるだけ気道を広げた状態にする。軽く膝を曲げて下側の腕は体の前方に伸ばしつつ、上側の腕を曲げ、その手の甲に顔をのせる。

参考:有機溶剤を取り扱う事業者の皆さまへ|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署

有機溶剤による健康被害への対策



有機溶剤を使用する職場では、有機則に基づいて次の対策を行なう必要があります。それぞれについて、ポイントを見ていきましょう。


◇作業主任者の選任
屋内作業場などで有機溶剤業務を行なうときは、有機溶剤作業主任者を選任して、次の職務を行なわせることが必要です。有機溶剤作業主任者は、有機溶剤作業主任者技能講習の修了者から選任します。

作業主任者の職務
● 作業の方法を決定し、労働者を指揮する
● 局所排気装置、プッシュプル型換気装置または全体換気装置を1ヵ月以内ごとに点検する
● 保護具の使用状況を監視する
● タンク内作業における措置が講じられていることを確認する


◇有機溶剤蒸気の発散源対策
屋内作業などで有機溶剤業務を行なう際には、有機溶剤蒸気の発散源を密閉する設備やプッシュプル型換気装置、局所排気装置などをその作業場所に設置しなければなりません。

有機溶剤の種類別の対策を見ると、第1種および第2種有機溶剤では発散源の密閉、プッシュプル型換気装置、局所排気装置のいずれかが必要です。

第3種有機溶剤では、タンクなどの内部で吹き付け作業を行なう場合、第1種・第2種と同様の対策をとります。吹き付け作業でない場合には、防毒マスクを着用していれば、全体換気装置でも対策が可能です。

有機則の適用外だとしても、使用する溶剤の有毒性や作業の内容に合わせて、労働者の健康障害を予防するための措置は大切です。換気装置の設置や保護具の使用といった適切な対策を行ないましょう。

また、短時間や臨時の有機溶剤業務、発散面の広い有機溶剤業務などを行なう際に、局所排気装置などを設置しない場合には、有機ガス用防毒マスクや送気マスクの使用が必須です。ただし、タンクなどの内部で行なう短時間業務、有機溶剤などを入れたことがあるタンク内での業務では、送気マスクに限られます。

有機ガス用防毒マスクを使用する場合には、有効時間に注意しましょう。


◇作業環境管理
屋内で、第1種および第2種有機溶剤に関する有機溶剤業務を行なう場合には、作業環境を測定・評価し、結果に応じて適切に改善することが重要です。

具体的な内容は、次のとおりです。

● 作業環境測定士(国家資格)による作業環境測定を、6ヵ月以内ごとに1回の頻度で定期的に実施する。
● 作業環境評価基準(告示)に基づいて結果を評価し、第3管理区分の場合には、すぐに改善のための措置をとる。第2管理区分の場合も改善に努める。
● 測定や評価の記録は3年間保存する。

事業所内に作業環境測定士がいない場合は、登録を受けた作業環境測定機関に作業を委託しましょう。


◇提示と保管
有機溶剤作業を行なう事業所では、以下の内容を作業中の労働者でもわかるように、見やすい場所に掲示する必要があります。

● 作業主任者の氏名・職務
● 有機溶剤が人体におよぼす作用など
● 取り扱う有機溶剤などの区分

そして有機溶剤などを貯蔵する際は、こぼれや漏れ、発散などが起こらないように栓などをした容器を使って、施錠できる換気の良い場所への保管が必要です。空容器は、密閉するか屋外の一定の場所に集めておきましょう。

また、許容消費量を超えないなど、消費量が少ない場合には、適用除外認定を受けられます。ただし、認定を受けていなければ、消費量が少なくても作業環境測定や健康診断などを実施しなければなりません。


◇有機溶剤等健康診断
常に有機溶剤業務に携わる労働者に対しては、雇用する際や当該業務へ配置替えをする際に、その後の6ヵ月以内ごとに1回の頻度で、特定項目の健康診断を定期的に実施する必要があります。なお、第3種有機溶剤などの場合は、タンクなどの内部での業務に限られます。

健康診断の結果は労働者に通知して5年間保存し、健康診断の結果報告書は労働基準監督署へと提出しましょう。

また、労働者が有機溶剤を多量に吸い込んだり汚染されたりしたときには、早急に医師の診察や処置を受けさせる必要があります。

参考:有機溶剤を正しく使いましょう|厚生労働省

有機溶剤業務の環境改善にクリーンエア・スカンジナビアの空気清浄機

有機溶剤の発散源対策では、溶剤の種類や作業内容によって、プッシュプル型換気装置や局所排気装置、全体換気装置などの設置が必要です。しかし、装置やダクトの設置スペースがない、といった事情で、導入が困難な場合もあるでしょう。

そういったときには、簡単に導入できて高性能なクリーンエア・スカンジナビアの空気清浄機がおすすめです。

QleanAir FS 70は、カビの胞子のような10μm以下の微小な粉塵を捕集できる、高度な集塵機能を備えた空気清浄機です。本製品は、工場や倉庫など室内における空気の品質管理が必要な事業者向けに開発されており、次のような特長を備えています。

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● メンテナンス保守サービス付きのレンタル契約で、トラブルの心配なく使用可能

QleanAir FS 70は、0.1~0.2μmの微小な粉塵も捕集できるフィルターによって、有機溶剤のニオイ成分の除去も可能です。印刷加工会社の導入事例では、約900立方メートルの作業エリアにQleanAir FS 70を2台導入したところ、導入後の空気中の有機溶剤濃度が約60%低減していることが確認されました。

機械換気に替わる方策として導入しやすく、高い空気浄化能力を備えたQleanAir FS 70の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

本製品の詳細については、以下のページでご確認ください。
QleanAir FS 70

まとめ

有機溶剤は有用である一方で、人体にとっては健康障害を引き起こす危険性をもった物質です。有機溶剤の取扱い方法は確立されており、具体的な対策が法令や規則で規定されているため、それらを遵守して安全に活用しましょう。

有機溶剤を使用する職場においては、有機溶剤のニオイ成分を除去できる高性能なクリーンエア・スカンジナビアの空気清浄機、QleanAir FS 70の導入がおすすめです。設置・移設が容易で、定期メンテナンスにも対応しておりますので、ぜひこの機会にQleanAir FS 70をご検討ください。

QleanAir FS 70