「リサイクル羽毛が当たり前の世の中を目指して。日本羽毛製造株式会社にインタビュー」分煙対策(喫煙ブース)・空気清浄ガイド

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リサイクル羽毛が当たり前の世の中を目指して。日本羽毛製造株式会社にインタビュー

クリーンエア・スカンジナビアは、SDGsに関する取り組みとして、サステイナブル・カンパニーを目指しています。

持続可能な発展への貢献。環境負荷削減のための責任ある行動。そして自社のバリューチェーンにおいて人々へのポジティブな効果を高めていくこと。私たちクリーンエアでは、こうした活動に取り組んで参ります。

この記事では、同様にSDGsの取り組みを行っている企業をインタビュー形式で紹介します。

昭和58年創業の日本羽毛製造株式会社は、埼玉県入間市で羽毛製品の製造・販売を手がける会社です。

同社は羽毛のリサイクル事業にも取り組んでおり、リサイクル羽毛を使用して開発したレッグウォーマーやブランケットなど、様々な製品が評判となっています。

「缶やビンと同じように、羽毛のリサイクルも当たり前の世の中にしていきたい」と語るのは代表取締役の早野賢治さん。事業内容と羽毛のリサイクル事業について、詳しくお話を伺いました。

埼玉県で羽毛製品を手がける日本羽毛製造株式会社




―本日はよろしくお願いします。まず、御社の事業内容についてお聞かせください。

当社は社名のとおり、羽毛を使用した製品を作っている会社です。私の父が41年前に創業しました。主に業務用の羽毛布団を製造しており、ホテルや医療機関などに提供しています。

また、羽毛を使用したダウンジャケットや巻きスカート、レッグウォーマーなどの製造・販売、その他アパレルのOEMも手がけています。

埼玉県入間市に本社オフィスと工場、併設のショールーム兼直営店があり、飯能市にも第二工場があります。

羽毛をリサイクルし、新たな布団やアパレル商品を製造




―御社では、製品に使用した羽毛をリサイクルする取り組みをされているそうですね。詳しく教えてください。

平成19年から羽毛のリサイクルを始めました。個人のお客様の羽毛布団を打ち直すことは38年ほど前から続けていますが、それとは別に、廃棄される布団から羽毛だけを取り出して洗浄し、リサイクルする事業です。

羽毛が廃棄時に焼却されていると知り、再利用できないかと考えたのがきっかけでした。


―リサイクル羽毛を使った製品例や、リサイクルの過程について教えてください。

ホテルや病院で使っていただく業務用の布団、一般向けの巻きスカートや足首レッグウォーマー、ひざ掛けなど、幅広く作っています。

リサイクルの過程においては、回収した羽毛を細かく分別しています。もともとの羽毛製品は安価なものから高価なものまで様々ですので、すべての羽毛を混ぜてしまうと、リサイクル後の品質が安定しないためです。

羽毛をブレンドする際の配合に注意し、なるべく品質が均一になるようにしてから、洗浄して新たな製品を作っています。

その一方で、分別で神経質になりすぎないこともポイントです。リサイクル品を作るために完璧を求めすぎると、せっかく回収した羽毛を無駄にしてしまいかねません。

そのため、たとえばフェザーは枕に使う、ご葬儀に使用される布団に使うなど、羽毛の種類に合わせた商品を考えて作り分け、回収した羽毛をなるべく使い切るように努力しています。

なるべく多くの羽毛を再利用できるようにしつつ、清潔に使っていただける製品づくりを行うことが大切です。

こうした工夫により、現在、弊社で作る商品のうち約8割がリサイクル羽毛を利用するものになっています。

「足首革命 リボンウォーマー」でリサイクル羽毛の良さを周知




―リサイクル羽毛製品の中には、百貨店で販売されたものもあるそうですね。

コロナ禍にマルイで臨時出店させていただき、リサイクル羽毛の事業を広く紹介する意味も込めて「足首革命 リボンウォーマー」という製品を販売しました。

それまではリサイクル羽毛の製品を一般向けに商品化していなかったのですが、この出店をきっかけにより自信がつき、現在の様々な商品化につながっています。


―百貨店でリサイクル羽毛の製品を扱ったのは、どのような経緯だったのでしょうか。リボンウォーマーは、色柄もたくさんあるようです。

羽毛は食肉加工の副産物として流通していること、そして当社が得意にしているのは羽毛のリサイクルだということをマルイの方にお話ししたら、取り組みに共感してくださいました。

私たちは自社工場で作っていますので、製品作りの小回りが利くという強みがあります。作りたいと思ったものは少なく材料を仕入れてまず作ってみる、ということができますので、楽しく作っていたら増えてしまったというのが正直なところです。

暖かさと目立たない色柄を望む声から「市役所ブランケット」も




―リサイクル羽毛について、ほかにお取り組みがあればお聞かせください。

最近は「市役所ブランケット」というリサイクル羽毛製品を入間市のふるさと納税で出品しており、ご注文いただけることが増えています。

開発のきっかけは、市役所にお勤めのお客様が当社の店舗に来店された際、「職場で使いやすい目立たない色で、無地のブランケットを作ってほしい」とおっしゃったことです。

コロナ禍は冬でも換気をよくしていましたから、職場で窓際に座る方などは特に寒いですよね。かといって仕事中にコートを着ているわけにもいかないため、「せめてひざ掛けを使えたら」と感じていらっしゃったそうです。

それまで、私たちはなるべくかわいい製品、見栄えのする製品を作ろうと考えていましたが、「なるべく目立たないものが欲しい」という需要があることを知りました。

そこで、落ち着いた雰囲気を大事にする職場に合う紺色の生地で、リサイクル羽毛を使ったブランケットを開発し、「市役所ブランケット」と名付けました。

ちなみに、このブランケットは入間市で回収された羽毛で作っているので、地元での資源循環にもつながっています。リサイクル羽毛を100%使用しており、そのうちダウンが80%、スモールフェザーが20%パーセントです。


―リサイクル羽毛の製品に関して、反響はいかがですか?

これは想定していなかったのですが、「リサイクル羽毛は羽毛特有の臭いがあまりしない」というお声をよくいただきます。

理由としては、リサイクルする過程で、長年使われていた羽毛をしっかりと洗浄するためです。

リサイクル羽毛を使ってペット用のベッドも作っているのですが、動物の臭いに敏感な猫たちも、高確率でベッドに寝ころび、くつろいでくれています。人間だけでなく、彼らにも支持されるというのはうれしいですね。

洗浄して新しい生地を使えば、羽毛は長く使える素材




―御社の羽毛リサイクル事業について詳しくご紹介いただき、ありがとうございます。ちなみに、羽毛布団は一般的に何年くらい使用できるものなのでしょうか。

2~3年ごとにクリーニングをすると、羽毛を包む生地が徐々に傷んでくると思います。

生地を破いて中の羽毛を取り出して洗浄し、新しい生地に詰めなおせば、羽毛自体は100年でも使えるでしょう。

日本では羽毛が使われるようになってからまだ50~60年ほどですが、ヨーロッパでは歴史が長く、400年ほども使われています。

打ち直しに関しては、ヨーロッパだと5~6年に一度、日本では8~10年で行う方もいれば、30年間何もしていないという方もいるようです。

一度も打ち直しをせずに数十年使ってボロボロになり、廃棄するというケースは少なくありませんが、汗や皮脂を落とすことで、より長持ちすると思います。最近はコインランドリーで洗濯する方も増えているようです。


―汗や皮脂を落とさないでいると、傷みが早くなりますか?

綿毛が開いていると、空気をたくさん含むため暖かいのですが、汗や皮脂によって綿毛が閉じてしまうと、暖かくなくなってしまいます。そのため、綿毛が開いた状態を保つという意味で、洗うことは有効です。

ただ、洗いすぎると脂分がなくなり、乾燥して綿毛が壊れてしまいます。強い洗剤ではなく、中性洗剤などで柔らかく洗っていただくのがおすすめです。

羽毛の良さを広め、リサイクルが当たり前の世の中にしたい




―御社は、日常生活に羽毛製品を普及させることも目指していると伺っています。その背景と、今後のご展望をお聞かせください。

東日本大震災の後、計画停電が実施された時期があったと思います。急に不便なことが増えたなかで、私たちは「羽毛製品を使えば使うほど節電になる」と気づきました。

防寒のために羽毛製品を使えば、体が温まるだけでなく、省エネにも貢献できます。そのことを実感し、日常生活で使いやすい羽毛製品を増やしていく必要があると考えました。

羽毛というと、布団かダウンジャケットしか思い浮かばない方が多いのではないでしょうか。今後は、たとえば腰回りの防寒のために羽毛を使った腹巻の使用を提案できるよう、様々な商品の開発を進めていく予定です。

「ダウンはもこもこして見える」というイメージもあるかと思いますので、羽毛を使っていることが見た目でわからないように羽毛を使う、といった工夫もしていきたいと思います。

また、2024年にはアメリカのクラウドファンディングにも挑戦しました。出品したのは、羽毛のデニム半纏です。

アメリカ人に提供するということを考慮し、和柄の生地ではなくデニム生地を使用して作りました。また、紐を結ぶ手間がないように、通常の半纏と異なるバックルにしたのも特徴です。


―海外向けの展開は、以前から検討されていたのでしょうか。

マルイに出店させていただいた際、外国人のお客様が多数いらっしゃっていたのですが、商品に興味を持っていただけてもサイズが合わないというケースがありました。

今後は大きいサイズや、より日本らしさを感じられるデザインの商品を提供できたらと思い、企画を温めているところです。


―最後に、サステイナブルな社会づくりに関心がある方、企業の皆様へメッセージをお願いします。

地球環境に関する取り組みは、一時のブームではなく、ずっと続いていくテーマだと思います。

しかし「環境に良い取り組みはお金にならない」と言われた時代に比べ、最近は「とにかく環境に良いことを!」とむしろ力が入りすぎているケースもあるのではないでしょうか。長く活動を続けるには、力を抜いて取り組んでいくことも重要だと思います。

リサイクル羽毛の事業も単なるブームではなく、缶やビン、古紙をリサイクルするのと同じように定着させることが私たちの目標です。

羽毛のリサイクルが珍しいことではなくなり、誰もが長く大切に使うものにできたらと思います。


―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。