飛沫感染と空気感染の違いは?感染予防策について知ろう
病原体が体内に侵入し人から人へとうつる疾患、それが感染症です。2019年末から世界中に拡大した「新型コロナウイルス感染症」のように、人類はこれまで幾度となく感染症と闘ってきました。人からうつらない、うつさないためには、一人ひとりの正しい知識と行動が大切です。
飛沫感染と接触感染、空気感染の違いは
私たちの身の回りには多数の細菌やウイルスが存在します。そのなかで、感染症を引き起こす原因となる微生物を病原体といいます。血液や蚊を媒介した感染もありますが、私たちの身の周りに潜む主な感染経路は「飛沫感染」、「接触感染」、そして「空気感染」の3つです。
それぞれの違いについて、詳しく見ていきましょう。
・飛沫感染とは
感染者が咳やくしゃみ、会話をする際に、“病原体が含まれた飛沫(唾液)が口から飛び出し、これを近くにいる人が吸い込んで感染する”ことを飛沫感染といいます。
飛沫の大きさは5μm(0.005mm)以上で、到達距離は空気中で1~2mほどと考えられています。
・接触感染とは
接触感染とは“感染者の手などからモノへ細菌やウイルスが移動し、そこに触れた人が感染する”ことです。握手やハグなど直接感染者と触れ合った場合だけでなく、感染者が触れたドアノブや手すり、スイッチ、便座など、モノを介しても感染する可能性があります。
・空気感染とは
空気感染は、文字通り「空気を介して感染すること」です。
飛沫感染における飛沫は、直径が5μm以上の水滴であり、水分の重さですぐに落下します。一方で、飛沫の水分が蒸発した、直径5μm以下の小さな粒子のことを「飛沫核」といい、これは落下せずに空中を漂います。
病原体が付着した飛沫核が空気を浮遊し、それを健康な人が吸い込むことによっておこるのが空気感染です。空気感染が起こる可能性のある病原体として、麻疹(はしか)ウイルス・水痘(水ぼうそう)ウイルス・結核菌が知られています。
飛沫感染を防止するには
毎年、猛威を振るうインフルエンザは、主に飛沫感染と接触感染から発症します。
まず飛沫感染を防止するために必要なのは、飛沫を浴びない、そして浴びさせないことです。
・マスクの着用
飛沫を浴びない、浴びさせないための手段として、飛沫をブロックする可能性があるマスクは効果的と考えられています。
マスク装着はできるだけ自分の身を守るためという側面もありますが、「他人に感染させない」という目的が大きいことがポイント。なかには微小の細菌やウイルスはマスクの布地を通り抜けるため意味がないという声もありますが、マスクは感染者自身のウイルス拡散を防ぐ効果が高いと分かっています。
自分の顔の形に合ったマスクを使用し、鼻からあごまでを隙間がないように確実に覆ってください。また、マスクは表面が汚染されるため、触れないようにしましょう。
・人との距離をあける
人と人との距離を保つのも重要です。誰かと外食する場合は、飛沫を飛ばし合うことのないよう注意しましょう。
・咳エチケット
厚生労働省が飛沫感染予防策として推奨していることの一つが咳エチケット。人がいるところで咳やくしゃみをするときは、マスクやティッシュ、ハンカチなどで口と鼻をおさえましょう。もしも持っていなければ、上着の袖で覆うのでもかまいません。
咳やくしゃみを手でおさえてしまうと、口から飛び出した細菌やウイルスが手に付着し、その手で触ったモノにうつります。それを他の人が触ると感染が拡大するリスクが高まるので、注意が必要です。
接触感染を防止するには
接触感染から身を守るための基本は、「手を清潔な状態に保つこと」と「感染源に直接触れないこと」です。
・手洗いをする
あらゆるモノに触れる手は、身体のなかでも病原体が付着している可能性が高い部位です。外出先から帰宅してすぐに、また調理前後や食事前には手を洗いましょう。
手の甲や指の間、親指のつけね、指先などの洗い残しをしやすい部位に注意し、石鹸をつけ手首までまんべんなく洗います。流水で洗いながした後は清潔なタオルかペーパータオルで拭き乾かしましょう。流水で手洗いができない場合は、アルコールを含んだ手指消毒薬を使用するのも効果的です。
また、人は無意識に手で顔を触る習性があり、1時間でなんと約23回も触っているという研究結果もあります。汚れた手で鼻や口などの粘膜に触れないようにしましょう。
・手袋を着用する
「感染源に直接触れない」ことも重要です。感染症の疑いがある人の嘔吐物や便などを処理するときは手袋を着用し、処理が終わったら速やかに外して手を洗ってください。手袋は手洗いの代わりにはなりません。
・清掃・除菌をこまめに行う
人がよく触れるモノや感染者の飛沫が付着している可能性が部分は、こまめに拭き上げる清掃が大切。拭き上げた後は、除菌・消毒を行うのが接触感染に有効とされています。厚生労働省は、手で触れる部分の消毒には、薄めた家庭用塩素系漂白剤で拭いた後、水拭きすることが有効としています。
空気感染を防止するには
空気感染の場合、病原体が微小な飛沫核となって、空気中を長時間浮遊するため、特殊な換気システムや高機能フィルターを使った対策が必要になります。
・N95マスクを着用する
N95マスクとは、マスクと顔が密着する特殊な構造をしたマスクのこと。空気がマスクのなかに漏れ入らないつくりになっていて、空中に浮遊する0.3μm 以上の微粒子を 95%以上カットできます。
N95 マスクは密閉性が高く、一般の人が日常生活で装着するものではありませんが、感染者に接触する機会の高い医療従事者等に勧められています。
・換気をする
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解によると(令和2年3月9日及び19日公表)、換気の悪い「密閉空間」、多くの人の「密集」、近距離での会話の「密接」の3要素が同時に重なったときが集団感染を起こしやすいとしています(※)。厚生労働省クラスター対策班も、換気の悪い環境は換気の良い環境よりも18.7倍も感染が起こりやすいと報告しています。
(※) 厚生労働省「商業施設等における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気について」
厚生労働省はこうした見解を踏まえ、換気の悪い密閉空間の改善について、「1時間に2回以上、数分程度窓を全開し換気を行うこと」や「複数窓がある場合は、二方向壁の窓を解放すること」、「適切な換気設備」が必要であるとしています。
・空気清浄機を利用する
空気清浄機には、直接ウイルスを死滅させる役割はありません。しかし、一般的な空気清浄機に搭載されている「HEPAフィルター」はJIS規格で「粒径0.3μmの粒子に対して99.97%の粒子捕集率を持つ」と定義されていて、ウイルスの捕集効果が期待できます。
厚生労働省からも、商業施設などでは以下の3点に留意するように換気されています。
1点目は、換気と空気清浄機を併用する場合、HEPAフィルターによるろ過式、かつ風量が毎分5㎥程度以上のものを使用すること。2点目は、人の居場所から6畳程度の範囲内に空気清浄機を設置すること。そして3点目は、外気を取り入れる風向きと空気清浄機の風向きを一致させること」です。
空気清浄機についてはこちら
まとめ
私たちの身の回りには、目に見えないさまざまな細菌やウイルスが存在しています。感染症を引き起こす病原体から身を守るためには、感染経路を知り遮断する対策が必要です。
手洗い、マスクの装着など、一人ひとりができることの実践や社会全体での感染予防の取り組みが求められています。
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飛沫感染とは?
感染者が咳やくしゃみ、会話をする際に、“病原体が含まれた飛沫(唾液)が口から飛び出し、これを近くにいる人が吸い込んで感染する”ことを飛沫感染といいます。
飛沫の大きさは5μm(0.005mm)以上で、到達距離は空気中で1~2mほどと考えられています。 -
空気感染とは?
空気感染は、文字通り「空気を介して感染すること」です。
飛沫感染における飛沫は、直径が5μm以上の水滴であり、水分の重さですぐに落下します。一方で、飛沫の水分が蒸発した、直径5μm以下の小さな粒子のことを「飛沫核」といい、これは落下せずに空中を漂います。
病原体が付着した飛沫核が空気を浮遊し、それを健康な人が吸い込むことによっておこるのが空気感染です。空気感染が起こる可能性のある病原体として、麻疹(はしか)ウイルス・水痘(水ぼうそう)ウイルス・結核菌が知られています。
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