食品工場でのカビ対策を解説!そもそもカビはなぜ生える?
食品工場は、水回りや冷蔵庫など湿度の高い場所が多く、カビが発生しがちです。しかし、万が一製品にカビが混入すれば、企業への信頼が大きく揺らぐため、入念なカビ対策が欠かせません。
そこでこの記事では、カビの生態や発生する原因、食品工場でのカビ対策などを詳しく解説します。
カビはなぜ生える?
そもそも、カビとはどういうものなのでしょうか。
カビは、「真菌」と呼ばれる生物で、真菌の仲間には酵母やキノコなどがあります。カビの体は菌糸と胞子から成り立っており、菌糸の先端から栄養分や水分を吸収して、胞子で増殖するのが特徴です。
胞子は私たちが吸っている空気中にも漂っており、食べ物や壁などに付着して温度や湿度などの環境が整うと、植物のように発芽します。
発芽すると菌糸を伸ばして成長し、菌糸体と呼ばれるコロニーをつくります。そして、十分に成長すると新たな胞子をつくり、空気中に胞子を飛散させて次の繁殖先を探す……というのがカビの成長するサイクルです。
カビは2022年4月現在、8万種以上が確認されていますが、食品工場ではクロカビ、アオカビ、コウジカビの3種が多く見られます。ちなみに、黒や青色などカビの色は胞子の色で、色が判別できるまで成長したカビはすでに胞子を飛ばしている状態です。
カビが生えやすい環境
カビには成長しやすい環境があります。カビ対策を解説する前に、どのような環境で成長しやすいのか確認しておきましょう。
◇温度
カビが育つのに最適な温度は、25~28度とされています。ただし、成長が可能な温度は0~40度で、種類によっては60度以上でも成長可能です。
25~28度は、夏前後の気温にあたります。梅雨や秋の長雨でカビが発生しやすくなるのは、ジメジメとした湿度だけでなく、温度もカビにとって最適な状態であるためです。
◇湿度
カビは湿度が65%を超えると繁殖しやすくなり、湿度が上がれば上がるほど繁殖スピードも上がります。
一方で、湿度が65%以下になると増えにくいとされていますが、あくまでも成長できないだけで、生存自体はできるため注意が必要です。また、乾燥した条件でも育つカビもあります。
◇pH
pH(ペーハー)とは水素イオン濃度のことで、酸性・中性・アルカリ性を判断する指標です。カビの成長に最適なのは、pH4~4.5と弱酸性の狭い範囲ですが、pHが2~8.5であれば生存が可能で、強酸性から弱アルカリ性まで幅広い環境に耐えられます。
◇栄養
カビが増えるには栄養が必要です。カビが特に好んでいるのはデンプンや糖分で、餅やお菓子にカビが生えた経験をお持ちの方も多いかもしれません。
しかし、デンプンや糖分以外にも、カビの栄養になるものはさまざまで、人の垢やホコリ、塗料、壁材までもが栄養分になります。
食品工場のカビを調べる方法
食品工場のなかに、カビがどのくらいいるのかを調べる方法として、落下菌を測定する方法と浮遊菌を測定する方法があります。
浮遊菌とは、ホコリや水滴などに付着して、風にあおられ空気中を漂っているもののことです。浮遊菌のうち、大きなものは重さで落下するため落下菌と呼ばれます。
本章では、それぞれの測定方法について解説します。
◇落下菌測定法
落下菌測定法では、一定時間内にシャーレに自然落下した落下菌を培養し、数を測定します。測定が簡単なのがメリットである一方、浮遊菌を測定できないことや、捕集に時間がかかることがデメリットです。
◇浮遊菌測定法
浮遊菌測定法では、エアサンプラーで一定量の空気を集めてシャーレなどに吹きつけて培養し、微生物の数を測定します。
捕集に時間がかからないのがメリットですが、装置が必要な点がデメリットです。
食品工場でのカビ対策
カビが生えるメカニズムを確認したところで、次は食品工場での具体的なカビ対策を解説します。
◇温度、湿度の管理
一般的にカビが成長できる温度は0~40度、湿度は65%以上です。特に食品工場では、水回りや冷蔵庫・冷凍庫の出入口、調理場の天井など湿度が高くなりやすい箇所が多くあります。そのため、空調や除湿機などの使用による、適切な湿度管理が重要です。
また、工場内の温度を0~40度の範囲外にすることは現実的ではありませんが、カビの成長に最適な25~28度を避けるだけでも成長速度を遅らせることは可能です。湿度と併せて温度も適切に管理することが大切でしょう。
◇空調などの清掃
空調設備は、ホコリがたまりやすいだけでなく、熱交換器が冷却される際に結露が発生するため、水分もたまりやすい特徴があります。つまり、カビにとっては好ましい環境です。
さらに、空調のなかでカビが成長すると、空調を通じて工場内に胞子がまき散らされます。そのため、空調をこまめに清掃してホコリなどの栄養分を取り除き、カビを成長させないことが重要です。
◇発生してしまったカビの除去
空調設備などにカビが発生した場合、カビの除去にブラシを使いがちですが、ブラシでこすると表面に傷が付いて、逆にカビが生えやすくなってしまいます。カビの除去は、次の手順で行いましょう。
1. 表面の胞子を殺菌
2. カビ本体の殺菌
3. カビや薬剤を洗い流す
4. 乾燥
表面の胞子を殺菌するには、エタノールスプレーがおすすめです。エタノールを吹きかけてしばらく放置すれば、表面の胞子は死滅します。
エタノールは70w/w%(重量パーセント)・約80v/v%(容量パーセント)のものが最も殺菌力が高く、それ以上に濃くしても効果は上がらないため注意してください。
カビ本体の殺菌には、次亜塩素酸ナトリウムが有効です。ペーパータオルなどに染みこませてから、表面を叩くようにして拭き取ります。次亜塩素酸ナトリウムを使う際には、換気を十分に行なうようにしましょう。
最後に、殺菌したカビや薬剤を十分に洗い流して、しっかり乾燥させます。
◇防カビ剤の塗布
カビが成長しないように、防カビ剤を塗布しておくことも有効な対策です。範囲が広い場合には、くん煙剤で全体をいぶすと、効率的に防カビ剤の処理が可能でしょう。
ただし、防カビ剤を塗布しても万能ではありません。上記で説明した温度・湿度の管理や空調の清掃も併せて行なうことで、効果的なカビ対策となります。
まとめ
カビは真菌の一種で、私たちが暮らしている空気中にも浮遊しており、暑さや寒さなど厳しい環境にも耐えられる生物です。温度や湿度、栄養などの条件が整うと一気に成長するため、しっかりとしたカビ対策が欠かせません。
食品工場でのカビ対策には、空調などの清掃、温度・湿度の管理、防カビ剤の塗布などがあります。併せて、空気中の胞子やホコリの除去により、より高いカビ対策が行なえるでしょう。
この記事で紹介した内容を参考に、食品工場での正しいカビ対策を理解し、適切に対処してください。
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