空気環境について

2021年06月29日

医師監修【感染症対策】避けるべき場所と一人ひとりができること

新型コロナウイルス感染症が世界中に広がり始めてから1年以上が経過しました。感染症の拡大を抑え込むために、わたしたちは外出を自粛し、外では常にマスクを使用するなどの対策を続けてきたわけですが、収束にはまだ時間がかかりそうです。

新型コロナウイルス感染症に限らず、世の中にはさまざまな感染症が存在します。目に見えない病原体から身を守るために、私たちはどんな対策をするべきなのでしょうか。

●監修医師

水野 泰孝
グローバルヘルスケアクリニック院長・医学博士
東京慈恵会医科大学大学院修了。タイ王国マヒドン大学熱帯医学部留学、在ベトナム日本大使館医務官、国立国際医療研究センター国際疾病センター(現:国際感染症センター)厚生労働技官、国際協力機構(JICA)感染症顧問医、東京医科大学准教授・同大学病院感染制御部長、感染症科診療科長などを歴任し、2019年より現職。日本感染症学会指導医、日本小児科学会指導医、日本アレルギー学会専門医、米国熱帯医学会認定医(CTropMed®)。専門は熱帯感染症、渡航関連感染症、予防接種。

https://ghc.tokyo/

感染しやすい場所

政府の新型コロナウイルス感染症分科会は、クラスター分析に基づき、感染リスクが高まる「5つの場面」を以下のようにまとめています。

共通して言えることは、「密閉(換気の悪い密閉空間)」、「密集(多くの人の密集)」、「密接(近距離での声の発生)」の3つの条件がそろっている場所ということです。

これは、新型コロナウイルスに限らず、インフルエンザやマイコプラズマ、溶連菌など、飛沫感染や接触感染による感染症でも、同様のことが言えるでしょう。

・大人数での長時間の飲食
実は、これまでインフルエンザやマイコプラズマなどの呼吸器感染症で会食の場面が問題になることは、ほとんどありませんでした。

というのも、多くの呼吸器感染症は症状が出現してから、他の人にうつすことが一般的だったからです。通常、発熱がある人は会食をしませんから、感染源として扱われることがなかったからだと思われます。

実際、大人数での長時間におよぶ飲食は、飛沫感染リスクを高める代表的な場面といえるでしょう。飲食中はマスクを外しますし、近距離での会話が伴います。

また、2~3人の少人数での集まりと比較して、5人以上となると大声での会話に発展しやすく、その分、飛沫が飛び交いやすくなります。さらに、大皿料理を取り分けるのに、共有のトングを使用することは接触感染のリスクを高める可能性があります。
・飲酒をしながらの懇親会
飲酒を伴う懇親会や会合も注意が必要です。飲酒をすると気分が高揚し大声を出しがちになります。飲み物の回し飲みや箸の共有も感染リスクを高める要因のひとつです。

また、カラオケボックスのような狭い空間で、複数の人が長時間滞在することも注意するべきでしょう。マスクを外して歌えば、たくさんの飛沫が飛びます。
・複数人での共同生活
感染症のリスクを高めるのは、狭い空間に長時間大勢がいっしょにいる状態です。特に、トイレや部屋を他の人と共有する寮やシェアハウスを利用している人は、接触感染に気をつけなければなりません。例えば、ノロウイルス感染症は流水でこまめな手洗いが重要です。
一方で、新型コロナウイルス感染症が流行してから、こまめに消毒する人が増えていますが、感染者のいる特殊な空間でない限り、接触での感染はほとんどないことが分かってきています。
・マスクなしの会話
マスクをせずに会話をすると、飛沫が飛び、それを吸い込むことで感染のリスクが高まります。たとえば、エレベーターの中や車やバスなどの公共交通機関では、不特定多数の人が乗り合わせています。感染症が流行している時期の混雑時の会話はできるだけ避けたいものです。
・喫煙所や休憩室
仕事の合間の休憩室でくつろいだり、喫煙所でタバコを吸ったりする時間は、どうしても気持ちがゆるみがちです。特に喫煙するときはマスクを外すので、喫煙室で感染症が広がった事例もあります。

クリーンエア・スカンジナビアでは喫煙ブースの飛沫感染対策として、「飛沫防止スクリーン」を用意しています。詳しくは以下のリンクを参照ください。

喫煙ブースの飛沫対策 – 飛沫防止スクリーン ニュース2020.7.13
一人ひとりができる感染症対策

感染症を予防するためには、一人ひとりができることを自覚して行動し、社会全体で対策に取り組むことが重要です。新型コロナウイルス感染症はもちろん、風邪やインフルエンザのような身近な感染症にも適用できる対策をご紹介します。

・マスクの着用
一般的に飛沫感染対策とは、咳などの症状があった場合にマスクを着用すること(咳エチケット)を指します。

これまでの概念では、咳などの症状がなければ必ずしもマスクを着用しなくても良いという認識でしたが、新型コロナの場合、症状がなくても発症する2日程度前から感染することが判明したため、外出時はほとんどの方がマスクをする生活になりました。

感染症を防ぐためには感染者の飛沫を「浴びない」、また「浴びさせない」ことが大切であり、近距離で人と接する際は、自分の顔の形に合ったマスクを鼻からあごまでしっかりと覆う正しい着用が有効といわれています。

最近の報告では、感染者がいる特殊な空間にいない限り、接触での感染はほとんどないことが分かってきています。つまり、飲食店の入り口でいくらアルコール消毒をしても、マスクなしで会話をすれば意味がなくなってしまいます。アルコール消毒をしなくても、おしぼりなどで手を拭くことでリスクを軽減できるのです。
・手洗いをする
感染症予防策として、もっとも基本になるのが「手洗い」です。

身体の中でもモノに触ることが多い手には、様々な細菌やウイルスが付着している可能性があります。電車のつり革や手すり、エレベーターのボタン、ドアノブなどを触った後、自分の顔に触れることで感染のリスクが高まるため、こまめに手を洗うことが重要です。

しっかりとハンドソープをつけて、指と指の間や付け根、手首などを丁寧に洗いましょう。手を洗う場所がなければアルコール消毒も有用です。
・ソーシャルディスタンスをとる
感染症の場合、症状は出ていないものの、実はウイルスを保有している人がいます。無症状・無症候の場合、自分が感染していることに気づきにくく、外出したり周囲に接触したりすると、知らぬ間に他の人に感染させてしまう可能性があります。

そこで必要になるのが、ソーシャルディスタンスです。会話の際などに発生する飛沫の距離は通常1~2メートルといわれていることから、厚生労働省は相手との距離を2メートルほどとることを推奨しています。

ここで注意したいのは、ソーシャルディスタンスは「マスクをしていない」人が周囲の人から飛沫を浴びるリスクがある場合にとる対策であるということです。もし、お互いが適切にマスクを着用している状況であれば、直接飛沫を浴びるリスクはほとんどありません。

たとえ満員電車に乗っていたとしても、ほぼ乗客全員がマスクをして、会話をしていなければ飛沫感染のリスクはほとんどなく、むしろ、手すりやつり革などからの接触感染に注意するべきでしょう。
・部屋の換気をする
厚生労働省は1時間に2回以上、数分程度窓を全開して換気することや風の流れができるように、2方向の窓をあけることを推奨しています。

新型コロナウイルス感染症対策として、換気の必要性が訴えられるようになりましたが、強く推奨されるのは「3密」と呼ばれる環境の中でマスクなしで会話をし、飛沫がエアロゾル化して空中に舞い、それを吸い込む可能性がある場合です。

したがって、マスクを着用し、会話のない少人数の環境では、換気をする必要性は高くありません。
・咳エチケット
インフルエンザやマイコプラズマなどは、咳やくしゃみによって生じる飛沫を吸い込むことで感染する飛沫感染の代表例です。

「咳エチケット」はこうした飛沫感染を防ぐ手段として有効です。

咳やくしゃみの症状がある人は、感染症にかかっているか否かにかかわらず、マスクの使用がすすめられます(咳エチケット)。マスクを持っていない場合は、咳やくしゃみをする際、ティッシュやハンカチ、もしくは上着の袖などで口や鼻を覆うようにし、顔を周囲の人からそむけるようにしましょう。使用したティッシュは、すみやかに捨て、手をこまめに洗うことが大切です。
まとめ

感染症を予防するためには、一人ひとりができることを自覚し、社会全体での対策が重要です。
新型コロナウイルス感染症の特徴については、徐々に解明されてきていますが、まだ不明確だった当時に、感染の原因の可能性として挙げられたこと全てを、今もなお徹底しているところがあります。

街中をフェイスシールド姿で歩く、レジ待ちで必要以上にディスタンスをとる、男性用トイレで使用できる便器を一つ置きにする、バスの最前列席をあけるなどなどの「過剰な感染対策」は不安を煽るだけではなく、それによる別の弊害が起こることもあります。
必要なのは、正しい知識の上に成り立つ適切な対策なのです。

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