【改正健康増進法】喫煙を主目的とするバーやスナックの分煙問題
改正健康増進法に基づき、飲食店では2019年9月1日から喫煙室における標識の提示義務が施行されています。また、基本的に飲食店では2020年4月1日から原則屋内禁煙となりますが、一定条件を満たすことで「喫煙専用室(飲食不可)」または「加熱式たばこ専用喫煙室(飲食可)」を設置し、分煙化が可能となります。
しかし、現行の健康増進法では屋内禁煙・分煙化の対象とならず、例外的な措置をとられている飲食店もあります。それが「喫煙を主目的とするバー・スナック等」の店舗です。この記事では、「喫煙を主目的とするバー・スナック等」とはどのような店舗であるか、また該当する店舗の分煙についてご紹介します。
バーやスナックの経営陣は知っておきたい改正健康増進法
バーやスナックなどは飲食店に含まれますが、レストランやファストフード店・居酒屋などとは営業の形態が若干異なります。バー・スナックは、お酒などの飲料や食べ物を来店客に提供するとともに、たばことそれを喫煙する空間を提供する店舗でもあるといえるからです。「お酒やおつまみを楽しみながら、同時にたばこを味わってひと息つくための空間」と説明すると、より分かりやすいかもしれません。実際に、喫煙される方がバーやスナックに行く目的のひとつとして「たばこを吸ってくつろげること」を挙げる方も多いでしょう。その通りで、バーやスナックは喫煙をサービスの一環として提供する場であるとみなされ、「喫煙目的施設」という扱いになります。
冒頭でご紹介した通り、改正健康増進法においては飲食店では原則屋内禁煙(2020年4月施行予定)となります。しかし、バーやスナックでの喫煙は営業形態の特徴上禁止すべきではないと判断され、現状の法制上では「従来の喫煙ルールを継続してもよい」とされています。
「自店舗は店名に『バー』『スナック』と付けられているから、法改正前の喫煙ルールでよい」と思ってしまう店舗経営者さんもいるかもしれません。しかし、従来の喫煙ルールの継続が認められる「喫煙を主目的とするバー・スナック等」に該当する店舗には、以下の通り一定の条件があります。
・たばこを販売することの許可を得て、対面でたばこの販売を行っている飲食店であること
・ご飯ものや麺類など、「通常主食と認められている食事(料理)」をおもに提供していないこと
店名にはバーやスナックと付けられていても、店内でたばこの販売を行っていなければ「喫煙を主目的とするバー・スナック等」には該当しないことになります。また、中心となるメニューがカレーライスやチャーハン、ラーメンなどの主食メニューである場合も、該当しなくなる可能性が高いです。
分かりやすく説明すると、「喫煙を主目的とするバー・スナック等」とは、「店内で許可を得てたばこを売っており、なおかつ『食事』ではなく『お酒とおつまみ』を中心としたメニューで構成されるお店=20歳以上の人だけが立ち入れるお店」ということになると考えられるでしょう。
とはいっても、「自店舗は『喫煙を主目的とするバー・スナック等』に当てはまるので、改正健康増進法にはあまり関係がない」と思って無関心になることは禁物です。「喫煙する人が特に多い施設だからこそ、改正健康増進法については熟知しておくべき」と考えたほうがよいでしょう。
喫煙を主目的とするバーやスナックの対象
ここでは、「喫煙を主目的とするバーやスナック」と認められる対象店舗の条件について、さらに詳細に見ていきましょう。
・「通常主食と認められている食事」について、どのような食事が主食に当てはまるか
提供メニュー | 主食であるか | 提供により「喫煙を主目的とするバー・スナック等」の対象となるか |
ご飯もの | ○ | × |
パン類 | ○ | × |
麺類 | ○ | × |
菓子パン | × | ○ |
・「通常主食と認められる食事」とは、具体的にどのような意味か
上記の表で「主食であるか=○」、「提供により対象となるか=×」となっているメニューは「主食と認められる食事」ですが、ランチ営業に限ってそれらのメニューを提供することは「喫煙を主目的とするバー・スナック等」においても認められます。ただし、その場合でも20歳未満の人は立ち入り不可とします。
・該当店舗において、自前で調理せずに調達する主食を提供することは認められるか
調達の方法 | 提供により「喫煙を主目的とするバー・スナック等」の対象となるか |
出前を取って主食を提供する | ○ |
電子レンジで加熱するだけの主食を提供する | ○ |
該当店舗で、出前をとって主食を提供する場合も、電子レンジで加熱するだけの主食を提供する場合も、「通常主食と認められる食事を主として提供するもの」には該当しないため、提供は認められます。
・便宣上サービスとして買い置きしたたばこの販売をしていれば、該当店舗と認められるか
たばこの販売許可を得ずに個人的に買い置きしたたばこを客に販売することは、改正法でのたばこ販売には当てはまらないため、該当店舗とは認められません。
・ダーツやゴルフなど、バー以外の行為を提供する店舗は該当店舗と認められるか
バー以外のサービスを提供していても、「喫煙を主目的とするバー・スナック等」の要件を満たしている店舗であれば該当店舗として認められます。
・喫煙目的施設の要件に関する帳簿について
たばこ販売の許可を受けていることが分かる許可通知書(たばこ事業法第22条第1項または第26条第1項の許可に関する許可通知書か、その写し)があればよいため、新たな帳簿の作成は不要です。
まとめ
この記事では、2019年9月1日から一部の施行が開始された改正健康増進法に基づく「喫煙を主目的とするバー・スナック等」の対応についてご紹介しました。
「喫煙を主目的とするバー・スナック等」に該当する飲食店は従来通りの喫煙ルールを継続できることとなっていますが、店内の全部または一部が「喫煙目的室」であることを示す標識を掲示することは必要となります。「たばこの喫煙が可能で、飲食も可能であること」を示す所定の標識を、店舗入り口などへ必ず掲示しておくようにしましょう。
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