企業のSDGsを伴走支援。日本SDGs協会の堤代表理事にインタビュー

企業のSDGsを伴走支援。日本SDGs協会の堤代表理事にインタビュー

クリーンエア・スカンジナビアは、SDGsに関する取り組みとして、サステイナブル・カンパニーを目指しています。

持続可能な発展への貢献。環境負荷削減のための責任ある行動。そして自社のバリューチェーンにおいて人々へのポジティブな効果を高めていくこと。私たちクリーンエアでは、こうした活動に取り組んで参ります。

この記事では、同様にSDGsの取組みを行っている企業をインタビュー形式で紹介します。

国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を理解し、実現するための役割を担うことは、企業にとって重要なテーマとなっています。しかし何をもってSDGsに取り組んでいるといえるのか、どのように進めていけばよいのかを考えるのは容易ではありません。

今回は、企業のSDGs事業認定や経営コンサルティング、また教育分野での活動を展開している「一般社団法人 日本SDGs協会」の堤晶子代表理事に、その業務内容と今後の展望について伺いました。

世界に広がるSDGs

―本日はよろしくお願いします。最初に、日本SDGs協会さまの設立背景について教えてください。

当協会は、「持続可能な開発目標(SDGs)」の周知、企業などでのSDGs実践支援を目的として活動する一般社団法人です。

SDGsが提唱されたのは開発アジェンダの節目の年、2015年の9月25日です。ニューヨーク国連本部において各国首脳が集まった総会(サミット)で決議されました。

世界が直面する貧困、気候変動、人種やジェンダーに起因する差別など、地球規模の問題に対して対処するため、加盟193ヵ国すべてが作業部会に参画し、合意した国際目標「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ(日本語:外務省仮訳)」が採択されたのです。

「2030アジェンダ」は、前文、総論などから構成され、世界の「危機」「脆弱さ」「チャンス」などを指摘し、「世界の変革」「誰一人取り残さない」という2つの理念を掲げ、5つの原則である人間、地球、繁栄、平和、パートナーシップのもとに各課題がまとめられています。このアジェンダの中で核として宣言されたのが「持続可能な開発目標(SDGs)」です。

「SDGs(Sutainable Development Goals)」は、2030年を達成期限として持続的な17のゴールと169のターゲットが設定されています。またインジケーターでその取り組み状況や進捗度を計測されています。

協会の活動:企業のSDGsを伴走支援



―日本SDGs協会さまでは、どのような活動をされているのでしょうか。

当協会では主に、多くの中堅・中小企業様をはじめ、上場の製造業・サービス企業様のご依頼をいただき、それぞれ本業におけるSDGs活動の評価や適切な取り組み、促進について助言や協力を行っています。

SDGsでは民間セクター、とくに営利企業活動における社会的課題への積極的な取り組みが期待されています。これは、CSRからCSVへの流れに沿うものです。

また、学校教育におけるSDGsを「探求的な学び」のテーマとするカリキュラム開発・研究を推進しています。

MDGsからSDGsへアップデート:企業部門のSDGsの重要性とは



―企業や学校など、さまざまな場で活動を展開されているのですね。

SDGsの特徴は、公共性のある課題に対して行政等やNGO等に頼るだけではなく、企業群も主役となって広くパートナーシップを活用し、社会全体がwin-winとなることを目指す点です。

この潮流はSDGsがもたらされた背景にあり、われわれの協会もこの方向性に共鳴して活動を始めました。すなわちSDGsは、2000年の国連ミレニアムサミットで採択され合意された「MDGs:ミレニアム開発目標(途上国の貧困削減、生活改善を目指した8つのゴールからなる公共政策)」の後継となるものであり、新たにCo2削減やイノベーションといったサステナブル社会への要請をゴールに加えて、企業の知恵と参加を促すものです。

このように社会や環境と経済、3つのバランスの取れた関係を再構築する観点から生まれた国際目標がSDGsであり、影響の大きい企業行動を通じて有限な地球環境を守りながら続けていける真の豊かさ、社会価値を実現しようとする目標にアップデートされました。

たとえば買物をする際、商品の素材や製造工程と環境、人権などに配慮したエシカル消費が行われたり、リサイクルやフードロス、洋服の過剰廃棄などに留意したりすることでサプライチェーンが見直され、全体として正当な資源の無駄を減らすことができます。

協会の姿勢

―企業活動とSDGsはどのようにかかわりがあるのでしょうか。

企業活動、各業務のSDGsのゴールへの最適化を考える際、その製品やサービス、製造プロセスなどが、当該ゴールの真の趣旨に合致しているのか真摯に検討する必要があるというのが当協会の基本姿勢です。それによって、SDGsに託された地球規模の問題解決に貢献できると考えています。

たとえば、ゴール8「働きがいも経済成長も」はよく取り上げられる目標で身近な尺度ですが、SDGsのレベルを満たすためには丁寧な評価が必要です。

海外取引企業では、開発先進国と開発途上国の産業発達の差、交易条件や失業率の違い、雇用創出、労働生産性、創造性や資源効率の格差、あるいは日本国内の女性・若年層の就労条件、働きがいのある人間らしい仕事の獲得状況、労働環境の整備と投入コストなどについても、企業様の認識や方針を聞きながら実績・エビデンスを確認することで、その企業本来のSDGsが見えてきます。

企業理念に立ち返ってもらう「事業認定」プロセス

―SDGs事業認定について教えてください。

当協会には「SDGsコンサルティング事業部」があります。この部署では、企業やさまざまな組織、学校、個人の方々の活動や事業が、どのゴールを目指したものであるか、どのようにSDGsの支援・達成に向かい、社会に貢献するのかを考える第一歩を踏み出していただくための「SDGs事業認定申請」までのアシストをさせていただいております。

どの事業・活動において、どのゴールをこれまで目指してきたのか、現時点において、何ができているのか。そして今後は達成のために何をしていき、どのような方向性の長期計画をもつのか。

企業にとっては、まさに「持続可能な企業」であり続けることができるかどうかを問い、命運をかける判断です。

SDGsに関する「SDGs危機の時代の羅針盤」(岩波新書/南博・稲場雅紀著)という書籍も出版されているとおり、今、「VUCA(将来の予測が不可能な状況)」といわれる時代に大海原を渡り切る羅針盤として、SDGsを活用していただきたいと考えています。

その一助となりますようにと願い、認定審査及び認定証の作成を行っています。当協会のSDGsコンサルティング部に対しては、審査員、当協会名誉顧問、顧問、名誉会長、理事・監事、リーガルアドバイザー、スーパーバイザーなど、さまざまな分野での専門家の方々ご指導・ご協力をいただいております。


―審査の過程で、企業様にフィードバックをされることもありますか?

SDGsに取り組んでいるということを直接的に示すのはなかなか難しいことです。国家の政策レベルで考えることでもありますから。企業様には申請事項欄にご記入いただき、当協会の専門家の先生方に審査をしていただきます。その事業が17あるSDGsのどのゴールに向かっているものなのかを認定する独自の審査です。

そのため当協会では事業の本質について問いかけを重ね、創業の理念まで立ち返っていただき、認定文に反映させられるように十分な検討をさせていただきます。

創設者の方は、必ず「社会に貢献する」という大志を抱かれて、会社を創られています。そのため社史を編むつもりでご自身の会社について振り返っていただくこのプロセスは、社員の方にとっても、その会社で働く誇りを感じる機会になると思います。求職者や新入社員の方へ会社の歴史と理念を説明される際にも有効ですよね。

こうしたプロセスをご一緒することで、会社自体が活性化し、新しい挑戦にもつながっていくと考えています。SDGsについても課題を発見されたり、既存の価値に気づかれたりする企業様が多くいらしゃいます。

長期的にコンサルティングを続ける企業も

―これまでにどのくらいの事業認定をされているのでしょうか?

当協会は設立からまだ4年半ですが、多岐にわたる業種の企業様から申請をいただいており、これまで約500社・1,000事業ほどのSDGs認定証を発行しております。

認定が終わりましたら、1年ごとにSDGs事業の「短期計画進捗状況」をご報告いただきます。そして、次の1年間に向けての計画を記載した「宣言書」を発行いたします。このプロセスで、事業認定コンサルティングが続いています。


―継続的なコンサルティングは、どのようなものなのでしょうか。

新事業の立ち上げで再びSDGs認定のご相談をいただく場合もありますし、一度受けた認定も更新制なので、その後の事業状況や計画をお聞きして認定内容の更新をする場合もあります。

オンラインミーティングやメールを通じて、回数を重ねてお話する場合も多くあります。

「SDGs経営研究委員会」でさらなる企業伴走

―今後、新たに取り組まれることはありますでしょうか。

昨年、「SDGs経営研究委員会」という会議を創設し、世界の現実的なサステナビリティの動きと経営モデルをリサーチしています。また、ESG投資の意義や企業価値創造における役割を調べています。

これらはSDGsの理念を企業の社員の方全員が共有し、同じ方向性をもって経営を進めていけるように支援するための研究、支援基盤です。企業様にSDGsの3側面である「社会」「経済」「環境」の調和を図り、自社の事業とのつながりをより強めていただくことをねらいとしています。
SDGsは複合的な公共政策から発想されて、徐々に営利企業にもインパクトを与えてきました。当協会ではさまざまな大学教員・研究者の方々から協会の活動にご指導、ご支援をいただいておりますので、社会課題の解決と企業活動の結びつきを高めていく研究ができると考えています。

当協会としては、企業様をリードするのでも下から支えるのでもなく「伴走」するように、ともに研究を進めてお役に立ちたいと考えています。

SDGsを活用して、事業活動の視野を広げる



―企業様にお伝えしたいことなどがありましたらお聞かせください。

SDGsにつながる事業とは何かを考える際、やはり自社の事業が発展・拡大、普及することで、経済の側面が充足し、同時に社会的課題が解決に向かいます。もちろん、環境保全に資する活動も可能にしなければなりません。そのバランスを取りながら、「誰一人取り残さない」社会の実現に貢献していただきたいと考えています。

さまざまな人の立場になって技術や商品、サービスを研究・開発し、一見、時間も経費もかかるように思える取り組みも推進していくことで、本当に世の中の役に立つ事業になるのではないでしょうか。

SDGsを活用することで、女性や子ども、高齢者、障害をもつ方の立場になって考えるなど、事業展開の視野を広げていただけたらと考えています。


―最後に、環境問題や社会課題に関心のある方へメッセージをお願いします。

国連のSDGsサイトからアクセスできる「我々の世界を変革する:2030アジェンダ」をご存知でしょうか。ここにはSDGsの理念、目指すべきことが明確に記載されています。

SDGsは世界の「改善」や「改革」ではなく、「変革」を目指すものです。「海岸のごみを拾って海を守る」といった活動ももちろん一つのきっかけにはなりますが、ぜひアジェンダを参考に、SDGsの本質について考えていただけたら幸いです。

近年の気候変動による災害増加から、地球の危機を感じる方は増えていると思います。そうした「環境」への意識から、より一層、「社会」や「経済」に関しての関心を高め、行動につなげていただけたらと考えています。

今後もさまざまな企業・団体・組織の皆さまとともに、我々の世界を変革するべく活動してまいります。


―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。