リユースで社会問題解決に貢献。株式会社エコリングにインタビュー
クリーンエア・スカンジナビアは、SDGsに関する取り組みとして、サステイナブル・カンパニーを目指しています。
持続可能な発展への貢献。環境負荷削減のための責任ある行動。そして自社のバリューチェーンにおいて人々へのポジティブな効果を高めていくこと。私たちクリーンエアでは、こうした活動に取り組んで参ります。
この記事では、同様にSDGsの取り組みを行っている企業をインタビュー形式で紹介します。
兵庫県姫路市に本社を構える「株式会社エコリング」は、不用品の幅広買取を中心としたリユースサービス事業を日本やアジアで展開する企業です。
「リユースで世界をもっとHAPPYに」というモットーを掲げる同社では、持続可能な循環型社会の実現を目指してリユース文化の拡大に取り組み、日本ではまだ数少ない「B Corp」認証も取得しています。
今回は株式会社エコリングでコンプライアンス部長を務める大和田誠太郎さん、サステナビリティ推進課長の村上洋子さんに、エコリングの強みと今後の展望を伺いました。
国内外にリユース文化を広げる株式会社エコリング
―本日はよろしくお願いします。まず御社の事業内容について教えてください。
村上さん(以下、村上):弊社は2001年に創業し、主にリユース事業を営んでおります。社名「エコリング」には「エコロジーの輪を広げていく」という意味が込められており、リユース事業を通じて社会問題の解決に貢献することが弊社の使命です。
近年の大量生産・大量消費・大量廃棄を抑制して最適生産・最適消費・最適廃棄へと転換し、持続可能な循環型社会の実現に寄与するべく事業を展開しています。現在の買取実店舗数は全国189店舗です。
タイやシンガポール、マレーシア、香港などアジア圏を中心にリユース文化を拡大し、国内ではフランチャイズ事業によってリユース事業への参入業者を増やすことで、環境課題への取り組みを促進しています。
また、お客様からお買取した商品を弊社独自のウェブオークションサービスで販売させていただく、他社様の商品をお預かりして委託出品をするという事業も行っております。
―ありがとうございます。買取事業を展開する会社は多数ありますが、御社の特徴はどのような点でしょうか?
村上:弊社の強みは「なんでも買取」「幅広買取」です。他のお店では買取を断られてしまうようなボロボロ、くたくたになった品物もお買取しております。世の中から「ごみ」という概念をなくしていき、捨てるのではなくリユースに回すという価値観を広げていきたいという思いで事業をしております。
「えがおプロジェクト」など社会への取り組みも展開
―社会への取り組みも多数展開されていますね。詳しくお聞かせください。
村上:まず「えがおプロジェクト」という活動があります。協賛企業様の施設をはじめ、さまざまな場所に不用品回収のボックスを設置し、集まった寄付品を現金に換えてタイの子ども達に還元する取り組みです。
大和田さん(以下、大和田):弊社は本社が兵庫県姫路市にありますので、最初は姫路近郊のお取引先様から始まり、さまざまな企業様・個人事業主様が協賛してくださっています。たとえば接骨院さんや飲食店さんでは、ご来店されるお客様から不用品をボックスに寄付をいただいています。
最近では神戸市にある大学にもボックスを設置させていただきました。このえがおプロジェクトを通じて産学連携を強められているかと思います。
村上:ちなみにコロナ禍前までは、現場の鑑定士を中心にタイへのボランティア研修も実施していました。実際に現地の子ども達と触れ合い、その生活環境を肌で感じることで社会問題解決の意識を深めるという研修です。来季からはこの研修を復活する予定になっています。
―ほかにはどのような取り組みをされていますか?
村上:児童養護施設を卒業する青年の自立を支援する「天使園プロジェクト」もあります。弊社で買取をした家具や家電製品を無償でプレゼントしたり、買取店舗でお客様から募金いただいた不要な外貨を日本円に替えて新品のパソコンを購入し、プレゼントしたりしています。
ほかには、子どもたちが楽しみながら社会の仕組みを学べる「キッザニア」に2店舗出店して鑑定士の仕事を体験してもらったり、フィールドスタディの受け入れ、出前授業(出張講義)を実施したり、小中学生向けキャリア教育教材「おしごと年鑑」への協賛などを通じて小中高生とのコミュニケーションも図っています。
アプリに業界初の機能「エコパラメーター」を搭載
―提供されているアプリに新機能が加わったそうですが、どのような機能なのでしょうか。
大和田:昨年(2022年)11月にリリースされた「エコパラメーター」という機能で、個人のお買取に伴うCO2削減量を測定し、アプリ画面でお客様へお伝えするというものです。
商品・製品を作る際、原材料の調達や加工を行うためにガソリン等の燃料を使って車両を動かしたり、工場を稼働させたりすることでCO2が発生するほか、不用となった物品をごみとして処分するとなれば、その廃棄処理にも多大なCO2が発生してしまいます。しかし、リユース品には、そのようなCO2が発生しませんから、リユース=環境配慮行動といえます。
一方で、「リユースは地球や環境のために良いことだ」となんとなく思っていただいていると思いますが、実際にどのくらい良いことをしているかというのは、なかなか実感しづらいと思います。そこで今回の「エコパラメーター」リリースによって、お客様がエコリングにお品物をお売りになり、リユースに参画してくださることで排出抑制されるCO2の量をお伝えしたいと考え、開発しました。
エコリングにお品物をお持ちいただくだけで地球の未来のための行動になっているということを、少しでもご実感いただければと考えています。
―リユース業界において画期的な機能なのですね。開発にはどのような道のりがありましたか?
村上:弊社でお買取する商品はさまざまですので、牛革素材から塩化ビニール製まで素材も多種多様です。
エコパラメーターは素材ごとの構成比を算出して計算ロジックに組み込みます。そのため大学名誉教授にもご参画いただきながら、全社員を巻き込んで手探りでデータを集め、組み合わせていきました。ついにリリースした時は非常に感慨深かったです。
今後も改良を重ね、よりユーザーの方が使いやすいサービスにしていきたいと思います。
大和田:購買行動の際は「環境にやさしい物」を自然と選ぶ時代になってきています。私たちは物が廃棄される時のCO2排出量にも目を向けていただくことを考えて、この機能を開発しました。
部門横断プロジェクトで「社会問題解決型組織」を目指す
―御社では部門横断型のプロジェクトがあるそうですね。
村上:2018年に代表の桑田が「社会問題解決型組織を目指していこう」と全社員に向けて宣言し、「B-Corpプロジェクト」を立ち上げました。部門横断型で社内の声を拾い上げ、制度化するチームが多数活動しています。
たとえば「女性サステナビリティ推進チーム」は女性だけで構成されていて、女性社員の声から会社に対する提案を行う役割を担っております。
大和田:社員の健康に関する取り組みも始めました。2022年に「健康経営優良法人」の認定を受けたのですが、評価された取り組みの一つは「禁煙補助制度」です。禁煙を宣言した社員には、禁煙外来にかかる費用や補助グッズなどの購入費用を会社が上限1万円まで負担しています。
改正健康増進法の施行により職場での屋内喫煙が原則できなくなったことをきっかけとして、会社でこの禁煙サポートを始めました。
経営陣の喫煙に対する考え方を社内に発信したり、禁煙に成功した社員の声を紹介したりしながら、「みんなで一緒に取り組もう」「周囲に迷惑がかからないように配慮しよう」といった意識を醸成しています。
こうした福利厚生制度の利用推奨や社内発信が活発になったのも、先ほどご紹介した部門横断プロジェクトを始めてからですね。
循環的なリユースが評価され、「B Corp」認証を取得
―「B Corp」認証取得についてもお聞かせください。
村上:リユース事業を中心とする弊社のさまざまな活動が評価され、「Bコーポレーション(以下、B Corp)」という認証を受けました。これは米国ペンシルベニア州に本拠を置く非営利団体「B Lab」が運営する認証制度です。
環境や社会に配慮した事業活動を行い、アカウンタビリティや透明性の点でも同団体の掲げる一定の基準を満たした企業に与えられます。
B Corpは、経済的価値だけでなく社会的価値も追求し、事業活動を通じて社会問題の解決を目指す、いわば「良い会社」の証ともいえる世界的な認証です。弊社は日本で7社目に認証を受けましたが、まだ日本国内では認知度が低いと感じています。
しかし海外ではこのB Corp認証を取得する企業が増えてきており、2022年12月現在、世界88ヶ国で6200社以上が認証を受けている状況です。
―御社のどのような点がB Corp認証につながったと思われますか?
大和田:私たちのビジネスモデルへの評価が大きいと考えています。同業他社様にはブランド品や車、衣類、ゴルフ用品、釣り具などさまざまなジャンルに特化した専門店が多いのですが、私たちはやはり「なんでも買取」が強みです。
そしてお買取後に廃棄に回るものが非常に少なく、99%は何らかの方法で次の使い手に届けることができています。この循環的なリユースが評価され、B Corp認証につながったのだと考えています。
また、B Corp認証の「環境」部門において世界トップ5%に入る「Best For The World 2022」を、日本国内では唯一受賞することができました。
「エコリングを使う人=良い人」と言われるサービスを目指して
―今後のご活動について、展望をお聞かせください。
村上:まず社内においては、来季も引き続きこの部門横断型プロジェクトを展開していきます。アプリもより一層お客様に利用していただけるようにバージョンアップを加えていく予定です。
大和田:SDGsに関連する取り組みとしては建物の環境に着目し、グリーントランスフォーメーションにも力を入れていきたいと考えています。
また、B Corp認証企業を増やすため、ご関心をお持ちの企業様に対して認証取得のお手伝いをしていきたいですね。
―最後に、SDGsにご関心のある方へメッセージをお願いします。
大和田:岸田内閣が掲げる「新しい資本主義の実現」政策では、社会課題解決に向けた制度化に力を入れています。内閣府の関心も高く、認証取得企業として微力ながらお力添えしてまいりました。今後はそのような社会課題を解決する企業でなければ、生き残れないのではないかと考えています。
私たちが目指しているのは「リユースのインフラになること」と、「エコリングを利用している人=良い人」と言われることです。
現状では、不用品のリユースをする人は全人口のわずか40%程度という調査結果があります。まずはリユース自体に参画する方を増やしていきたいですし、数ある事業者の中でエコリングをご利用いただく方が「良い人」と言っていただけるよう、ブランディングにも注力していきたいと思います。
―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
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