「環境印刷」を掲げてSDGsに取り組む「ソーシャルプリンティングカンパニー®」とは?大川印刷株式会社にインタビュー
クリーンエア・スカンジナビアは、SDGsに関する取り組みとして、サステイナブル・カンパニーを目指しています。
持続可能な発展への貢献。環境負荷削減のための責任ある行動。そして自社のバリューチェーンにおいて人々へのポジティブな効果を高めていくこと。私たちクリーンエアでは、こうした活動に取り組んで参ります。この記事では、同様にSDGsの取組みを行っている企業をインタビュー形式で紹介します。
神奈川県横浜市に本社を構える株式会社大川印刷は、創業から140年以上続く歴史ある企業です。自社の印刷事業に「環境印刷」を掲げ、印刷から納品までの工程において環境に配慮した事業を展開してきました。SDGsを実践する企業として数多くの受賞歴をもち、各界から注目されています。
今回は、品質保証部の草間さんに株式会社大川印刷の取り組みについてお話を伺いました。
数々の受賞歴で注目されるソーシャルプリンティングカンパニー®「大川印刷」
―本日はよろしくお願いします。まずは御社の事業内容について教えてください。
草間さん(以下、草間):当社は1881年に横浜市で創業した印刷会社です。創業時はドイツ・イギリスから輸入した印刷機を使用した医薬品のラベル印刷や、戦後は崎陽軒の弁当の掛け紙印刷などを手がけていました。
現社長の大川哲郎が、2005年に6代目社長として就任した際、自社の社会的使命を「ソーシャルプリンティングカンパニー®」(社会的印刷会社)と位置づけて以来、社会課題と向き合う事業活動を展開して参りました。
平成27年に「地球温暖化防止活動環境大臣表彰」を受賞するなど、環境負荷低減に特化した「環境印刷」への取り組みが評価されています。
また、他社に先駆けて、印刷事業における年間のCO₂全量をあらかじめオフセットする取り組みやボトムアップ型のプロジェクト活動などが評価され、第2回ジャパンSDGsアワード「SDGsパートナーシップ賞(特別賞)」(2018年)も受賞するなど、SDGsに積極的に取り組んでいます。
―御社がSDGsに着目したきっかけを教えてください。
草間:自社を「ソーシャルプリンティングカンパニー®」(社会的印刷会社)と位置づけたことを機に、「環境経営・環境印刷」に舵を切りました。
その背景には、インターネット印刷等の新たなビジネスモデルの台頭により、印刷業界の価格競争が激化したこともあり、他社との差別化を図る狙いもありました。
継続してCSR・CSV活動に取り組むなかで、2015年に国連が採択したSDGsは国内外の社会課題が整理されており、中小企業でも本業を通じてSDGsに取り組むことで、新たなビジネス機会の創出にもつながると考えたのがきっかけです。
自社が取り組んできたCSR・CSV活動の指標としてSDGsの各目標を捉えることができたことも取り組みのあと押しとなりました。
―SDGsの17のゴールのうち、特に注力している項目はありますか?
草間:「7.エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」と「13.気候変動に具体的な対策を」ですね。環境保全の取り組みは特に注力している項目です。
カーボン・オフセットによる自社の「CO2ゼロ化」を実現
―具体的な取り組みについて教えてください。
草間:大川印刷では中小企業として「脱炭素」に向けた取り組みを推進しています。「環境印刷」を推進するなかで、業界に先んじて2016年に「CO2ゼロ印刷」をスタートしました。自社から排出されたCO2全量をカーボン・オフセットすることにより、CO2のゼロ化を実現。2019年には自社工場の再生可能エネルギー100%を達成しています。
2017年から自社電力の再生可能エネルギー化のためのプロジェクトをスタートさせ、2018年には横浜市の「事業者向け初期投資0円太陽光発電設置モデル事業」の第1号事業者として、本社屋上に太陽光パネルを設置しました。
自社工場の消費電力の約20%を自社発電でまかない、その他の80%は横浜市の脱炭素化の施策「Zero Carbo Yokohama」事業によって横浜市に供給されることになった青森県横浜町の風力発電の電力を使用しています。
「風と太陽で刷る印刷」をコンセプトに活動し、2021年に国内の印刷業の中小企業としては初となる「SBT認定」をうけたほか、「再エネ100宣言 RE Action」にも参加しています。
―事業活動におけるエネルギーの脱炭素化に注力されているのですね。
草間:そうですね。当社の取り組みは印刷事業にとどまらず、さまざまな形での社会課題解決を模索しています。一例として、横浜駅近くにある営業所を一部改装し、社会課題解決型スタジオ「with GREEN PRINTING」をオープンさせました。動画の収録や配信のほか、イベントスペースとしてご利用いただけます。スタジオ内の電力はすべてカーボン・オフセットになっています。
現在、月に1度、社会的テーマの映画配信を行うユナイテッドピープル株式会社様のご協力の下、with GREEN PRINTING 上映会&交流会を開催し、現代社会における課題点を共有する機会づくり・場づくりにも取り組んでいます。
SDGsの取り組みが企業をつなぐ機会に
―企業がSDGsを推進するメリットを教えてください。
草間:SDGsは個人や企業、みんなの課題であり、課題解決にむけてどんなことができるのか?と考えるきっかけを与えてくれるのではないでしょうか。当社は「環境印刷」を筆頭に、SDGsにつながる活動を推進するなかで、大川印刷の独自性を見出すことができました。
ありがたいことに、「大川印刷さんの環境印刷で印刷をお願いしたい」とご用命いただくことも多くあります。
SDGsの目標達成にむけた取り組みは決して容易いものではありませんが、まずは「行動」することで企業の新たな価値を生み出すことができると感じています。
―SDGsの推進を通して社内外の変化や反響はありますか?
草間:2018年に第2回ジャパンSDGsアワード「SDGsパートナーシップ賞(特別賞)」を受賞したことをきっかけに、当社に興味をもっていただく機会が増えました。それまでCSRやSDGsの活動に懐疑的だった従業員もいましたが、外部の方々からご評価をいただいたことで、自分たちの取り組みにあらためて興味をもち、協力的に活動してくれることも増えるなど、社内の変化も感じています。
社会課題解決型スタジオ「with GREEN PRINTING」で、印刷事業にとどまらない活動を
―今後、さらに注力したいことや計画や目標を教えてください。
草間:「印刷業を通じて社会の課題を解決し、地域や社会に必要とされる人と企業になる」という目標は継続しながら、印刷事業に依存しない新たな取り組みにも積極的にチャレンジしていきたいです。
社会課題解決型スタジオ「with GREEN PRINTING」の存在をもっともっと多くの方に知っていただき、足を運んでいただけるような場づくりやSNS発信にも注力していきます。ゆくゆくは「with GREEN PRINTING」がさまざまな人が集える「横浜の基地」のような存在になれたらと考えております。夢が現実になるように行動していきたいですね。
―読者へのメッセージをお願いします。
草間:私がSDGsに取り組みはじめた2018年頃は、まだSDGsについて知っている人はほんの一部でした。それが、広く社会に認知され、みんなで取り組める気運が高まっていることに嬉しさを感じるとともに、あらためて自分たちも真摯に取り組まなくてはと襟を正す思いです。
SDGsについて考えたり、活動したり、当社と共に取り組む機会をいただけましたら嬉しいですね。
―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
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