農業残さをバイオマス燃料として利活用。北王コンサルタント株式会社にインタビュー

農業残さをバイオマス燃料として利活用。北王コンサルタント株式会社にインタビュー

クリーンエア・スカンジナビアは、SDGsに関する取り組みとして、サステイナブル・カンパニーを目指しています。

持続可能な発展への貢献。環境負荷削減のための責任ある行動。そして自社のバリューチェーンにおいて人々へのポジティブな効果を高めていくこと。私たちクリーンエアでは、こうした活動に取り組んで参ります。この記事では、同様にSDGsの取り組みを行っている企業をインタビュー形式で紹介します。

北王コンサルタント株式会社は、昭和42年に北海道で創業した建設コンサルタント会社です。農地や農業施設を改良するための調査・設計も行い、北海道の農業の発展にも貢献されてきました。

SDGsの取り組みとしても、農業の収穫時に発生する農業残さを原料としたバイオマス燃料の開発や、下水を利活用した肥料の提案など、農業に密接に関わる活動に注力され、持続可能な社会の実現に向けて活動されています。

今回は北王コンサルタント株式会社SDGプロジェクト所属 営業部 石原さん、総務部 尾藤さんにお話を伺いました。

人と自然が調和する、快適で豊かな北の大地を創造する



―本日はよろしくお願いします。まず御社の沿革や主な事業内容を教えてください。

当社は北海道の建設コンサルタントとして、「人と自然が調和する、快適で豊かな北の大地を創造する」という企業理念のもと、道路、橋梁、河川、上下水道、農地・農業施設等、インフラの調査・計画・設計を通じて、地域社会のニーズに応えてきました。

そのなかでも、北海道の基幹産業である農業と関わり深い「農業土木分野」のインフラ整備に力を入れてきました。農地や農業施設を改良することで、農作物の生産力向上や農作業の効率化を実現するなど、食料の安定供給にも貢献しています。

農作物の収穫時に発生する農業残さを利活用



―SDGsの取り組みのなかで、特に力を入れている分野はありますか。

ゼロカーボンの実現に向けた取り組みと、社員の健康づくりに力を入れて取り組んでいます。

農業残さをバイオマス燃料として利活用することで、CO2の排出を抑制すると同時に、農業界で課題となっている廃棄物の大量発生を抑制することができます。それは、食糧生産基地である十勝地区の農業を支えることにもつながります。

また企業が社員の健康を支援することは、個々の力を最大限に発揮できる環境を整えることです。生産性の向上により、会社の発展、経済の発展に期待できます。

社員の健康づくりの取り組みが認められ、経済産業省が定める健康経営優良法人2023ブライト500にも認定されています。


―バイオマス燃料の利活用について、北海道省エネルギー・新エネルギー促進大賞を受賞されているそうですね。詳しく教えてください。

農業が盛んな十勝地区では、美味しい作物が取れる代償に農業残さが大量に発生してしまうため、その処理が課題となっています。

当社では、その課題解決とゼロカーボンの実現に向けて、グループ会社の北王農林株式会社とともに、農業残さの1つである小麦くずをバイオマス燃料として利用する活動に取り組みました。具体的には、小麦くずを燃料としたバイオマスバーナーで、ビニールハウス内に温風を供給し、冬期間にホワイトアスパラガスを栽培しています。

本来廃棄物として扱われる小麦くずを利用することで、化石燃料を使わずにエネルギーを得られるこの取り組みは、廃棄物の削減・化石燃料の削減の点からも、脱炭素化に向けた一歩だと考えています。本取り組みは令和4年度北海道省エネルギー・新エネルギー促進大賞の新エネルギー部門にて大賞を受賞することができました。

十勝ビストロ下水道プロジェクトの発足


下水汚泥肥料で育てたとうもろこし


―十勝の下水道と地域活性化について考えるプロジェクトを発足されたと伺いました。詳しくお聞かせください。

下水処理の過程で発生する汚泥を発酵させて作った「下水汚泥(げすいおでい)肥料」には、植物に有益なリンや窒素などの栄養分が豊富に含まれています。

当社はそのポテンシャルに焦点を当て、十勝地区の農業・食のさらなる活性化を目指すため、2020年10月に「十勝ビストロ下水道プロジェクト」を立ち上げました。十勝の「下水道」「食」「農」をテーマに、農業関係者、下水道関係者、大学、関連団体、民間企業など複数業種の方との意見交換会や視察をこれまでに4回実施しています。

プロジェクトの活動を通じて、プロジェクトメンバーの北王農林では、2021年10月から下水道由来肥料を年間100t受け入れており、2022年には下水汚泥肥料で育てたとうもろこしを生産・販売。2023年からは幕別町のふるさと納税返礼品として登録しています。

下水汚泥は肥料の生成に有効であるにも関わらず、これまで焼却して処理されてきました。このプロジェクトにより、焼却時のCO2排出を抑えられるとともに、輸入に頼ってきた肥料原料を国内で回収し、循環型社会の実現につなげていきます。



自社保有森林


―下水が肥料になるとは驚きました。そのほか取り組まれている活動はありますか?

弊社を含めたグループ会社では1996年から植林や造林を行っており、合わせて1,500ヘクタールの森林を保有しています。森林を守ることは「CO2の吸収・固定」につながるだけでなく、生態系の保全や土砂災害の防止にもつながります。

世界では森林の減少が問題視されていますが、国土の約7割が森林である日本では、森林の高齢化が課題です。若い木々のほうが、成熟した木々に比べてCO2の吸収率が高いため、「木々を育成し、生産し、利用する」サイクルを繰り返すことで、持続可能な暮らしを与えてくれると考えています。

SDGsに取り組むことは企業の生存戦略と通じる

―企業がSDGsを推進するメリットは何だと考えていますか?

SDGsは現代社会の課題が網羅されていると思います。今の社会が必要としているこの取り組みに向き合うことは、これから先の時代を生きていく企業の生存戦略の一つと言えるのではないでしょうか。

対応することで社会に貢献することができ、そのことは地域での信頼獲得につながるはずです。

また働きやすい環境づくりは、社員のモチベーション向上につながると同時に、優秀な人材の確保が期待できます。

「持続可能な社会の実現」と聞くと、一見難しい課題のように感じますが、会社がSDGsの取り組みを行うことは、「持続可能な会社・社員の実現」に言い換えることもでき、会社と社員のための未来づくりにつながるでしょう。

全社員がSDGsを身近に感じてもらうために



―今後注力したいことやご計画はありますか?

2023年度より、若手社員が中心となって会社の未来を考える「未来プロジェクト」を開始しました。

SDGsへの取り組みも、このプロジェクトの一環として活発な活動を目指しています。社員全員がSDGsに関心を持ち、自分ごととして考えられるような情報の提供を行っていきたいですね。

新型コロナウイルス感染症の流行もひと段落してきたところで、これまで自粛していた社内イベントを復活させ、社員同士のコミュニケーションの活性化や運動機会の提供を計画することで、社員の心身の健康にも寄り添っていきたいと思います。

脱炭素社会の実現に向けた取り組みについて、課題はまだまだ残っています。例えば、下水汚泥肥料を使用した野菜には、安全性への懸念やイメージの悪さが残っており、下水汚泥の取り扱いに関する法律の厳しさが、積極的に利用することへのブレーキをかけています。

工夫を凝らしてそういった課題を少しずつ解決し、生産者・消費者の十分な理解を促進することで、循環型社会の実現に貢献する会社でありたいです。


―読者の方に向けてメッセージをお願いします。

SDGsの取り組みは、一つひとつの小さな取り組みが社会を変えていく原動力となるはずです。「自分は興味がない」「難しくてわからない」ではなく、全員が当事者である意識を持つことが大切だと思います。

これらの取り組みに対して、「我慢や不便を強いられるもの」という認識ではなく、「未来の自分たちの暮らしの質を向上させるもの」と捉え、できることから始めていけると素敵だと思います。


―本日はお話いただきありがとうございました。