労災保険とは?給付される条件や補償内容、労災が申請された際に企業がやるべきことも解説
「労災」や「労災保険」という言葉は聞いたことがあっても、具体的な内容まで理解している方は少ないでしょう。
普段あまり意識することはないかもしれませんが、労災保険は業務上の事故が起きた際に労働者を保護するための重要な制度です。
本記事では、労災の内容や適用範囲、労災保険の補償内容と申請方法などを詳しく解説します。また、労災が起きてしまったときの会社側の対応と、労働環境向上におすすめのクリーンエア・スカンジナビアの空気清浄機も紹介しています。
万が一のため、労災について詳しく知っておきたいという方はぜひ参考にしてください。
労災とは
労災(労働災害)とは、労働者が業務中や通勤中に発生した事故によって被ったけがや病気、障害、死亡などのことを指します。
工場や建設現場などでの事故だけに限らず、長時間労働などによる過労死や過労自殺、パワハラ・セクハラなどによる精神疾患も当てはまる可能性があります。
労災が起こったとき、勤め先の所轄労働基準監督署に対して、労災事故について保険給付の申請を行い、労災の認定を受けることで、労災保険の保険給付を受けることができます。
労災保険とは
労災保険は、正しくは「労働者災害補償保険」といい、労働者や一定の規模の事務所の事業主を保護するための公的保険制度です。
業務上や通勤中に発生したけがや病気、障害、または死亡に対し、労働者やその家族に国が一定の給付を行ないます。
ここからは労災保険の加入条件や対象者、保険料の負担などについて詳しく見ていきましょう。
◇加入条件
労働者を1人でも雇っている事業主は、労災保険に必ず加入しなくてはいけません。
一部の農林水産事業では任意加入とされていますが、ほとんどの事業で加入する義務があります。
◇加入対象者
労災保険は、雇用形態にかかわらず事業主に雇用され賃金が支払われているすべての労働者を対象としています。
正社員だけでなく、契約社員や派遣社員、パートやアルバイト、日雇い労働者も対象です。
年齢制限はないため、18歳未満の未成年者や65歳以上の高齢者も対象となります。
◇保険料の負担者
労災保険の保険料は全額事業主負担です。
健康保険等のように労働者が保険料を負担するものとは異なります。
◇事業主が労災未加入だったら?
事業主が労災保険に加入していなかったり、保険料を滞納していたりした場合でも、労働者は労災保険から補償を受けることができます。加入義務は事業主にあり、労働者に責任はないからです。
一方、事業主側は保険料を遡って徴収されるほか、追徴金の徴収や労災保険給付額の全額または一部が徴収されるなどの大きなペナルティを課せられます。場合によっては財産差し押さえなど、国税徴収の例による滞納処分を受けることもあります。
労災保険の適用範囲
労災保険の補償を受けるには、労働基準監督署で労災と認定されなくてはなりません。労災には大きく分けて「業務災害」と「通勤災害」があります。
どのような場合に労災保険が適用されるのか、その適用範囲を見ていきましょう。
◇業務災害
業務災害とは、業務上で起こったけがや病気、障害、死亡のことを指します。業務上であるかどうかを判断するには「業務遂行性」と「業務起因性」という点が重要なポイントです。
「業務遂行性」とは、簡単に言うと、事業主の支配下にある状態をいいます。
「業務起因性」とは、業務に起因して災害が発生し、その災害が、傷病等の原因になったことです。
たとえ業務時間内であっても、業務ではない私的な行為によって負傷した場合や、故意による災害は該当しません。
◇通勤災害
通勤災害は、家と職場の往復などで被ったけがや病気、傷害、死亡などを指します。
寄り道をするなどして経路から外れたり、通勤や業務と関係のない行為を行なったりした場合には、その間とその後の移動は通勤災害の対象にはなりません。
ただし日常生活上必要な行為である場合は、その後経路に戻ったときから再び「通勤」とみなされます。
労災保険の補償内容
労災保険にはさまざまな補償があります。給付金の計算では「給付基礎日額」や「算定基礎日額」がもとになっています。
給付基礎日額とは、原則として、災害が発生した日または診断によって疾病の発生が確定した日の直前3ヵ月の賃金(ボーナス等を除く)の総額を、その期間の総日数で割った1日あたりの額です。
算定基礎日額とは、原則として、災害が発生した日または診断によって疾病の発生が確定した日以前の1年間に受けた特別給与(ボーナスなど3ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金)の総額を、算定基礎年額として365で割った額のことです。
ここからは、労災保険の代表的な7つの補償内容を紹介します。
◇療養補償給付
療養補償給付は、業務上や通勤に起因したけがや病気により療養が必要となった際に受けられる補償です。けがや病気が治癒(症状固定)するまでの療養の現物給付、または例外として費用が支給されます。
「療養の現物給付」では、労災病院や労災保険指定医療機関・薬局などで、診療や薬の支給、入院治療が無料で受けられます。
「療養の費用の支給」は、止むを得ない事情があると認められる場合などの特別な場合に限り、例外として費用が支給される制度です。
◇休業補償給付
休業補償給付は、労災によるけがや病気のために働けなくなり、賃金がもらえなくなった場合に受けられる制度です。
休業補償給付では休業した日が通算して4日目から、給付基礎日額の60%×休業日数分が支払われます。
さらに休業特別支給金として給付基礎日額の20%×休業日数分が支給されるため、合わせて給付基礎日額の80%×休業日数分が支給されることになります。
◇障害補償給付
障害補償給付では、労災により被ったけがや病気が治癒したあとも身体に障害が残った場合に給付金が支給されます。
労災保険における「治癒」とは、傷病が完全に治った状態だけを表すのではなく、治療を行なってもそれ以上の医療効果が期待できない状態(症状固定)も含まれます。その場合は障害の程度に応じ、一定額の年金もしくは一時金が支給されます。
◇遺族補償給付
遺族補償給付では、労災により労働者が死亡した場合に、遺族に対して遺族補償年金と遺族特別年金、遺族特別支給金(一時金)が給付されます。
遺族補償年金の受給対象となるのは、死亡当時、亡くなった方の収入によって生計を維持していた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹です。
ただし妻以外の遺族では、被災労働者の死亡当時、一定の高齢または年少、一定の障害の状態にある場合に限られます。
受け取れる金額は受給する遺族の人数に応じて以下のとおり変わります。
遺族数 | 遺族(補償)等年金 | 遺族特別支給金(一時金) | 遺族特別年金 |
1人 | 給付基礎日額の153日分(ただし、その遺族が55歳以上の妻または一定の障害状態にある妻の場合は給付基礎日額の175日分) | 300万円 | 算定基礎日額の153日分(ただし、その遺族が55歳以上の妻または一定の障害状態にある妻の場合は算定基礎日額の175日分) |
2人 | 給付基礎日額の201日分 | 算定基礎日額の201日分 | |
3人 | 給付基礎日額の223日分 | 算定基礎日額の223日分 | |
4人以上 | 給付基礎日額の245日分 | 算定基礎日額の245日分 |
引用:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署『遺族(補償)等給付 葬祭料等(葬祭給付)の請求手続』
また遺族年金保障給付の受給資格者がいない場合、受給資格者のうち最も優先順位の高い人のみに、給付基礎日額1,000日分の遺族補償一時金が支給されます。
◇葬祭料
葬祭料は、労災により亡くなった方の葬祭を行なった方に対して給付されます。遺族がいない場合でも、会社が行なったのであればその会社に対して支給されることになります。
葬祭料の給付額は下記のうちどちらか高い方が支給されます。
● 31万5,000円+給付基礎日額の30日分
● 給付基礎日額の60日分
◇傷病補償年金
傷病補償年金とは、労災によるけがや病気が療養開始後1年6ヵ月経過しても治らず、一定の傷病等級に該当する場合に、年金として支給されるものです。
支給額は等級ごとに以下のように定められています。
傷病等級 | 傷病(補償)年金 | 傷病特別支給金(一時金) | 傷病特別年金 |
第1級 | 給付基礎日額の313日分 | 114万円 | 給付基礎日額の313日分 |
第2級 | 給付基礎日額の277日分 | 107万円 | 給付基礎日額の277日分 |
第3級 | 給付基礎日額の245日分 | 100万円 | 給付基礎日額の245日分 |
引用:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署『労災保険 休業(補償)等給付傷病(補償)等年金の請求手続』
◇介護補償給付
介護補償年金は、障害補償年金または傷病補償年金の受給者のうち、障害・傷病等級が第1級の方と、第2級の「精神神経・胸腹部臓器の障害」のある方が、現に介護を受けている場合に支給されます。
介護とは、民間の有料介護サービスや、親族、友人によるものなども対象です。ただし病院や診療所に入院している場合や、特別養護老人ホーム、介護施設などに入所している方、障害者支援施設で生活介護を受けている場合などは、十分な介護サービスがなされているものとして支給の対象外となります。
介護補償給付は月額で支給され、その額は親族等の介護の有無や、常時介護あるいは随時介護かどうかに加えて、介護補償給付の支給事由が生じた月であるかどうかで月の介護費用支出額によっても異なります。
最高限度額 | 最低補償額 | |
常時介護の場合 | 17万2,550円 | 7万7,890円 |
随時介護の場合 | 8万6,280円 | 3万8,900円 |
参考:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署『労災保険 介護(補償)等給付の請求手続』
労災保険の申請方法
労災の手続きを自分で行なう際の申請方法を解説します。
◇請求書の入手
まずは会社の所在地を所轄する労働基準監督署または厚生労働省のホームページから、補償の種類に応じた請求書を入手します。
補償の種類によって使用する請求書が異なるため、自分がどの補償を受けられるのかを事前に確認しておきましょう。
◇請求書に記入、必要書類を入手
次に、請求書に必要事項を記入します。労災による負傷または発病の年月日や、災害の原因と発生状況のほか、これらが記載したとおりであることの証明として事業主の署名も必要です。
添付書類は、医師の診断書や各種証明書、治療費等の領収書など、補償の種類によってそれぞれ異なるため注意しましょう。
◇請求書を提出
最後に、補償の種類ごとの必要書類を労働基準監督署に提出します。その後、労働基準監督署が申請内容に基づき労災に該当するか調査を行ない、労災と認められれば給付が行なわれる流れです。このとき、場合によっては追加書類を求められることがあります。
また、労災保険の申請には申請期間が定められています。補償の種類ごとに起算日や期限が異なり、手続きの期限を過ぎると給付金が受け取れなくなるため注意してください。
期限 | 補償の種類 |
2年 | (療養補償給付 ※) 休業補償給付 葬祭料 介護補償給付 |
5年 | 遺族補償年金 遺族補償一時金 障害補償給付 |
期限なし (監督署長の職権により移行されるため) |
傷病補償年金 |
※療養補償給付は現物給付であるため、原則として時効は存在しないものの、費用の請求の場合は2年の時効があります。
労災事故が起きたときの会社の対応
労災事故が起きてしまったとき、会社は何にどう対応すればよいのでしょうか?
いざというときスムーズに対応できるよう、しっかり確認しておきましょう。
◇労働基準監督署や警察の事情聴取に応じる
労災事故発生後、労働基準監督署や警察の現場検証、事情聴取などが行なわれる場合は、それに応じます。
病気や精神疾患の労災は業務との因果関係を明らかにするのが難しいため、事故によるけがや死亡に比べて調査が長引くことがあります。
労災申請後、関係資料や報告書の提出を求められた場合は、期限までに提出するようにしましょう。
◇被災した労働者や家族への対応
労災事故が発生した際には、被災した労働者の救護を第一に行ないます。二次災害へつながらないよう状況に応じて消防や救急へ出動を求め、被災労働者の家族にも連絡しましょう。
場合によっては、被災労働者やその家族から損害賠償を請求される可能性もあります。
◇労災申請への対応
労災事故が発生し労働者から労災申請を求められたら、会社側はそれに協力しなければなりません。労働者から労災申請の申し出があった場合に、会社はそれをサポートするよう義務付けられているからです。
労災によるけがや病気のため、被災労働者が自身で労災申請の手続きができないときは、会社はその手続きを支援する必要があります。また、労働者から労災の証明を求められれば、労災申請書類の「事業主証明欄」への記入も行ないます。
ただし会社として労災に該当しないと考えている場合には、安易に事業主証明欄へ記入するべきではありません。自社の見解を労働基準監督署に提出するなどして、誤った労災認定がされないように対処することも大切です。
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労働環境を整える対策の一つとして、空気環境の見直しもおすすめです。分煙対策はもちろん、換気がしにくいオフィスや倉庫、清潔が求められる食品や医療品の製造業など、空気への意識は高まってきています。
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社内の空気環境が気になり始めたら、ぜひ「QleanAir FS 70」の導入検討をおすすめします。
QleanAir FS 70
まとめ
十分気を付けていても、労働災害はいつ起こるかわかりません。もしものとき労働者を保護するのが労災保険です。労災保険の仕組みを知り、万が一被災してしまった際に受けられる補償を確認しておきましょう。
また事業主の方は労働災害が起きないような環境づくりと、労災申請がされたときにどのような対応をするべきなのか、普段から意識しておくことが大切です。
現在の労働環境で危険な箇所はないか、労働者にとって快適な空間か、この機会にあらためてチェックしてみてはいかがでしょうか。
監修者情報
お名前:岡崎壮史
▼プロフィール
マネーライフワークス 代表 社会保険労務士・1級FP技能士・CFP・基本情報技術者。大学卒業後、外資系生命保険会社にて保険の営業、資格の専門学校の講師を経て、2016年に独立開業。
現在は、助成金に特化した社会保険労務士として、全国の企業から助成金の申請代行業務や活用コンサルやオンラインセミナーなどを中心に、金融・社会保険系の記事の執筆・記事監修なども行っている。
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