敷地内全面禁煙にする目的は?改正健康増進法の内容も解説
喫煙は、がん、脳卒中、糖尿病などのほか、呼吸器疾患や循環器疾患など多くの病気の直接的な原因になり得ます。また、喫煙を始めた年齢が若いほど、それらの病気を引き起こすリスクや死亡率が高くなることも明らかになっています。
たとえ非喫煙者でも、他者のたばこの煙を吸って健康被害を受けてしまうリスクは看過できません。そのため、受動喫煙による健康被害を減らそうと、全国のさまざまな施設で「敷地内全面禁煙」の動きが広がっています。
この記事では、受動喫煙防止対策を強化する法律「改正健康増進法」について解説します。
改正健康増進法とは?
まずは、改正健康増進法の概要を解説します。
◇改正健康増進法とは
改正健康増進法とは、2002(平成14)年に公布された「健康増進法」の一部を改正したものです。改正法のおもな目的は「望まない受動喫煙を防ぐこと」で、基本的な考え方として、次の3つが掲げられています。
1. 望まない受動喫煙をなくす
2. 受動喫煙による健康被害が特に懸念される子ども・患者などへの配慮
3. 施設の種類や場所に応じて、適切な対策を実施する
改正前の健康増進法では、施設や店舗による受動喫煙防止対策は「努力義務」とされていました。また、「受動喫煙を生じさせない喫煙場所」の定義が不明確であったため、総合的な受動喫煙防止対策が講じにくい状況でした。
そこで行なわれたのが、受動喫煙防止のためのルールづくりです。改正健康増進法では、受動喫煙防止の取り組みを「マナー」から「ルール」に変え、一部の場所を除き、施設や店舗などは屋内全面禁煙と取り決めました。また、施設の管理者に対して必要な対策の実施が義務付けられ、違反すると罰則(過料)の対象となることがあります。
改正法は2018(平成30)年7月の公布以降、段階的に施行され、2019(令和1)年7月から学校・病院・行政機関などの敷地内では原則として禁煙になりました。2020(令和2)年4月からは改正法が全面施行となり、現在では多くの方が利用する施設では原則として屋内は禁煙となっています。
◇改正のおもなポイント
改正健康増進法により、各施設が以下の3つの種別に分類されました。
1. 第一種施設:行政機関の庁舎・学校・児童福祉施設・病院・薬局など
2. 第二種施設:第一種施設以外の2人以上が利用する施設(事務所・工場・宿泊施設・飲食店・旅客運送用事業船舶、鉄道・国会、裁判所など)
3. 喫煙目的施設:バー・スナック・公衆喫煙所・店内での喫煙可能なたばこ販売店など
出典:改正健康増進法の体系・厚生労働省
続いて、法改正によって規制対象施設に求められるようになった4つのポイントを見ていきましょう。
・原則、屋内は禁煙に
改正法の全面施行によって、多くの人が利用する鉄道、飲食店、ホテルやオフィスなどの施設では、原則として屋内禁煙となりました。ここでいう「屋内」とは、屋根があり外気が妨げられる建物、および建物の側面の半分以上を壁で覆われているものの内部を指します。
煙がほとんど出ない加熱式たばこ(電子たばこ)も規制対象となっており、禁煙エリアで吸うことはできません。禁煙エリアで喫煙した場合には罰則(過料)が科されることもあるため注意しましょう。
・喫煙室の設置
改正法の全面施行により、屋内は原則禁煙となりましたが、第二種施設では以下の条件(技術的基準)を満たしていれば、施設内での喫煙室の設置が認められます。
1. 喫煙室出入口において、喫煙室外から喫煙室内に流れる空気の気流が毎秒0.2m以上あること
2. たばこの煙・蒸気が喫煙室外に流出しないように、壁や天井などで区画されていること
3. たばこの煙・蒸気が屋外や外部へ排気されていること
※施設内が複数階に分かれている場合は、喫煙室を壁や天井で区画し、喫煙階と禁煙階を分けるという措置も可能です。
※既存特定飲食提供施設(改正法の施行時にすでに存在していた飲食店等)が、店舗内全体を喫煙可能室とする場合は、(2)の条件のみを満たす必要があります。
※既存特定飲食提供施設であり、なおかつ施設所有者の責めに帰することができない理由(建物の構造上、新たにダクトを通すことが困難であるなど)によって技術的基準を満たすことが困難な場合は、技術的基準について一定の経過措置が設けられます。
出典:たばこの煙の流出防止にかかる技術的基準・厚生労働省
既存特定飲食提供施設とは、改正法の施行時にすでに存在しており、次の要件を満たしている飲食店のことをいいます。
1. 2020年3月31日までに開業していること
2. 資本金が5,000万円以下であること
3. 客席面積が100㎡以下であること
出典:既存の経営規模の小さな飲食店への経過措置について(既存特定飲食提供施設の考え方)|厚生労働省
所定の条件を満たす場合には、次のようなタイプの喫煙室を設置できます。
● 喫煙専用室
たばこ全般(葉巻・パイプ・水たばこ・加熱式たばこなど)の喫煙が可能。ただし、たばこを吸うことだけが目的とされるため飲食は不可。
● 指定たばこ専用喫煙室
加熱式たばこのみ喫煙可能。飲食も可。
● 喫煙目的室
喫煙目的施設に設置可能。飲食も可。ただし、米類・パン類・麺類などの主食の提供は不可。
● 喫煙可能室
既存特定飲食提供施設に設置可能。対象施設は施設の一部、またはすべての範囲において喫煙可能室とすることが認められる。飲食可。
・ 20歳未満は、喫煙エリアへの立入禁止
20歳未満の方は入室目的にかかわらず、屋内・屋外すべての喫煙エリアへの立ち入りが禁止されています。施設の従業員でも立ち入ってはなりません。20歳未満の方を喫煙室に立ち入らせた施設の管理者や責任者などは、指導や助言の対象となります。
・喫煙室への標識掲示義務付け
喫煙室を設置する場合は、施設の主要出入口と喫煙室の出入口の両方に、喫煙室のタイプに応じた標識を掲示することが義務付けられました。
また、喫煙室の出入口には「20歳未満の方は立入禁止」といった標識を掲示しなくてはなりません。同様に、全面的に喫煙できる施設の主要出入口にも、20歳未満の立ち入りを禁止する旨の標識を掲示する必要があります。
原則、敷地内禁煙の施設でも喫煙所の設置は可能
第一種施設には、学校や病院など公共性が高く健康への配慮が特に必要な施設が含まれているため、最も規制が厳しく、敷地内は原則禁煙となっています。
しかし以下の要件をすべて満たすことで、喫煙所の設置が認められます。
● 屋外に設置すること
● 喫煙できる場所と禁煙場所が明確に区画されていること
● 喫煙可能な場所とわかるように、法令により指定された標識が掲示されていること
● 施設利用者が通常立ち入らない場所に設けること(建物の裏や屋上など)
条例が国の基準より厳しい場合もある
前述のとおり、最も規制が厳しい第一種施設であっても、一定の条件を満たせば屋外喫煙所の設置が可能です。しかし、自治体や施設によっては受動喫煙防止対策をさらに強化し、法律よりも厳しい基準を設けているところもあります。敷地内全面禁煙を徹底し、喫煙所の設置をしない、またはもともとあった喫煙所を廃止する施設も少なくありません。
したがって、自社の施設に屋外喫煙室の設置を検討している場合には、自治体ホームページなどに記載された規程をよく確認しましょう。利用者の健康を守り、快適な施設環境を維持するためにも、事業者には慎重な対応が求められます。
敷地内を全面禁煙にする目的
敷地内を全面禁煙にする目的は、望まない受動喫煙を防止することにあります。たばこの煙を不快に思う非喫煙者は多く、敷地内に喘息患者がいる場合などは、たばこの煙が原因で発作を引き起こす可能性も否定できません。
また敷地内を全面禁煙にすれば、吸い殻のポイ捨てによる火災も防止できます。秋や冬など、空気が乾燥した季節には、火が消えていない吸い殻のポイ捨てが原因で出火するケースも少なくありません。敷地内全面禁煙は、こうしたリスクの防止にも有効といえるでしょう。
施設内に喫煙ブースを置きたいときにはクリーンエア・スカンジナビア
敷地内を全面禁煙にしたことによって、敷地外でのタバコのポイ捨てや増えたり、喫煙者の喫煙休憩の時間が長くなったりするという新たな問題を抱える企業もあるでしょう。
喫煙者と非喫煙者、両者が快適に過ごすための喫煙環境の整備をお考えなら、喫煙ブースの導入を検討してみてはいかがでしょうか。クリーンエア・スカンジナビアの分煙機(以下、分煙キャビン)は、厚生労働省が定める喫煙ブースの技術的基準をクリアしており、喫煙室の代用としてもお使いいただけます。
クリーンエア・スカンジナビアの分煙キャビンには、特殊フィルターが搭載されており、たばこの煙に含まれる粒子状物質・ガス状物質などの有害成分をほぼ100%捕集して逃しません。そのため、至近距離でもたばこの煙や臭いが感じられないほどの消臭効果を発揮します。
さらに、100Vの電源がある場所であればどこでも設置可能で、限られたスペースを有効活用できます。設置にあたって大規模な工事は必要なく、屋外排気の問題についてもご相談いただけます。新築の建物から築年数が経った建物まで、施設の状況に合わせた柔軟な対応が可能です。
分煙キャビンの導入後は、クリーンエア・スカンジナビアのスタッフが定期的に空気浄化フィルターの点検や交換を行ない、快適な空気環境を維持します。また、喫煙場所が所定の要件を満たすことを証明するための計測や、レポート作成の代行にも対応しております。
分煙キャビンの詳細については、以下のページでご確認ください。
分煙機(キャビンソリューション)
まとめ
改正健康増進法は、望まない受動喫煙を防止するための法律です。敷地内での喫煙には各種喫煙室の設置が必要になるため、設置を検討する場合は所定の要件を満たしているか、よく確認しましょう。喫煙する方はルールやマナーを守り、他者への十分な配慮を心がけることが大切です。
また、受動喫煙対策には分煙機の設置も効果的です。オフィスや事業所内で場所を選ばずに設置できる分煙キャビンの導入を、ぜひご検討ください。
分煙機(キャビンソリューション)
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