日本の衣類を、日本で再循環。豊島株式会社にインタビュー

日本の衣類を、日本で再循環。豊島株式会社にインタビュー

クリーンエア・スカンジナビアは、SDGsに関する取り組みとして、サステイナブル・カンパニーを目指しています。

持続可能な発展への貢献。環境負荷削減のための責任ある行動。そして自社のバリューチェーンにおいて人々へのポジティブな効果を高めていくこと。私たちクリーンエアでは、こうした活動に取り組んで参ります。

この記事では、同様にSDGsの取り組みを行っている企業をインタビュー形式で紹介します。

愛知県と東京都に本社を構える豊島株式会社は、繊維を中心に様々なライフスタイルを提案している商社です。原料から原糸、テキスタイル、最終製品まで事業を拡大し国内外で事業を展開しています。

今回お話を伺ったのは、同社で素材の開発・ブランディングと営業フォローを担当されている谷村 佳宏(たにむら よしひろ)さん。不要になった繊維製品を新しく生まれ変わらせる衣類回収プロジェクト「WAMEGURI®(ワメグリ)」について伺いました。

ファッション産業の全プロセスを手掛ける豊島株式会社



―本日はよろしくお願いします。御社の事業内容と谷村さんのお仕事について教えてください。

谷村さん(以下、谷村):当社は1841年に創業し、180年を超える歴史の中で、時代の変化に応じて事業領域を拡大してきました。現在は世界各地から原料・糸・生地を買付け、販売を行い、最終製品の企画から生産管理、納品まで一連のプロセスを手掛けています。ファッション産業のあらゆる過程において総合的に事業を展開しているのが特徴です。

また、持続可能なライフスタイルを提案する企業としてさまざまなサステナブル素材や機能素材の開発と提供、そしてテックベンチャーへの投資やスマートウェアの開発を推進しています。

2019年より「MY WILL(マイ・ウィル)」をステートメントとし、サステナビリティやテクノロジー、素材に対する当社の姿勢を打ち出してきました。

私は消費者起点でモノづくりや仕組みを考えて、素材開発・素材ブランディングとその営業フォローを行っています。サステナビリティ性や機能性を整理し、顧客に合わせて他社にない提案を行っています。

衣類回収プロジェクト「WAMEGURI(ワメグリ)」



―衣類回収プロジェクト「WAMEGURI」の概要を教えてください。

谷村:「WAMEGURI」は、日本国内の不要になった繊維製品を素材ごとに回収・再生するプロジェクトです。コットン、ウールなど繊維製品の素材を専用の反毛機械を使って、わた状に戻し、再び紡績し、新しい商品へと生まれ変わらせます。

縫製などの一部の工程は海外で実施する場合がありますが、このプロジェクトの特徴は繊維製品の回収・選別・再紡績の工程を日本国内で行い、「日本の衣類を日本で再循環させる」仕組みをとっている点です。

プロジェクト第一弾商品は、ジーンズを中核アイテムとしたカジュアルウェアを販売する株式会社ライトオン様との協業によって生まれた、同社の新デニムライン「SUSTAINA-BLUE(サステナ ブルー)」でした。


―プロジェクト開始のきっかけは何だったのでしょうか?

谷村:日本国内のアパレル供給量は年間35億枚と言われていますが、消費者が手放した後にリサイクルやリユース(海外輸出を含む)にあてられる服は、全体のたった34%(※)というデータが出ています。残りの66%はゴミとして処分され、埋め立てられている状況です。

日本で供給されるアパレル製品の2~3%を当社が生産させていただいているからこそ、処分される66%に責任を持つべきだと考え、このプロジェクトを開始しました。

※環境省「SUSTAINABLE FASHION これからのファッションを持続可能に

「WAMEGURI」は環境負荷の低い方法で再生に取り組む



―不要となった衣類はどこから回収されるのでしょうか?再生に適した衣類についても教えてください。

谷村:先ほどご紹介したライトオン様をはじめ、プロジェクトに共感いただいているファッション企業様の店頭や、イベント等で回収している実績があります。

再生までの過程で「反毛」(不要になった繊維などを専用の機械でもう一度わた状に戻すこと)という作業を行いますので、ファスナー等の付属が少なく、単一の素材で作られた衣類が適しています。


―反毛、紡績、製品化のプロセスにおいて難しいポイントはありますか?

谷村:各工程におけるモノの移動距離をできるだけ少なくして、モノづくりへの環境負荷が少ない方法を選択しています。

回収する衣服の色や混率(生地に含まれる繊維の割合)が異なるため、完成した際にどうしても色味は均一でなくなってしまいます。また販売価格も一般の商品より少し上がるため、商品としての魅力をどのように伝えるかは工夫を必要とする点です。

衣類以外への再利用も検討中



―今後のご計画や目標を教えてください。

谷村:「WAMEGURI」をサーキュラー(循環)プラットフォームにしたいと考えています。衣服から新たな衣服に再生するだけでなく、様々な技術をもつ企業様と連携しながら、肥料やボードなど、色々な形で衣類を再利用できる仕組みを作りたいと考えているところです。


―最後に、SDGsに関心のある方へメッセージをお願いします。

谷村:皆さんが普段着用している衣服は資源になりますので、ファッションを楽しんだ後の廃棄の方法にもぜひ目を向けていただければ幸いです。当社は今後も皆さんと一緒に衣類の大量廃棄の問題を考えていきたいと考えています。


―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。