「理解する」から「情報発信」まで。SDGs実装を支援する加山興業株式会社にインタビュー

「理解する」から「情報発信」まで。SDGs実装を支援する加山興業株式会社にインタビュー

クリーンエア・スカンジナビアは、SDGsに関する取り組みとして、サステイナブル・カンパニーを目指しています。持続可能な発展への貢献。環境負荷削減のための責任ある行動。そして自社のバリューチェーンにおいて人々へのポジティブな効果を高めていくこと。

私たちクリーンエアでは、こうした活動に取り組んで参ります。今回は、同様にSDGsの取組みを行っている企業をインタビュー形式で紹介します。

愛知県名古屋市に本社を構える加山興業株式会社は、昭和27年の創業以来、廃棄物処理業者として廃棄物の適正処理・リサイクルに取り組んでいる企業です。環境を守り、自然に還すためにリサイクル率100%を目指して日々処理技術の向上に努め、顧客のニーズに合う提案をしています。

同社ではSDGs経営を推進する自治体や団体、企業、個人に伴走する「SDGs実装支援サービス」にも力を入れています。今回は加山興業株式会社 代表取締役 加山順一郎さんにお話を伺いました。

廃棄物の適正処理・リサイクルのプロ、加山興業株式会社



―本日はよろしくお願いします。まず御社の沿革や事業内容を教えてください。

当社は1961年の創業から、産業廃棄物の適正処理リサイクルを中心に事業を行ってきました。主に建設現場や医療機関から排出される多品種小ロットの廃棄物を受け入れて、リサイクル率100%を目指し日々処理技術の向上に努めています。

廃棄物だけではなく環境課題の解決に広く貢献するため、脱炭素事業、養蜂事業、SDGs実装支援、環境教育などさまざまな環境ソリューション事業を行っています。

長期的なSDGs経営に伴走するSDGs実装支援サービス



―SDGs実装支援サービスを開始された経緯をお聞かせください。

2015年の国連サミットでSDGsが採択されたことによって、社会が持続可能性に対して真剣に取り組み始めたと思います。当社もまず一企業として、廃棄物課題の解決のみでなく、長期的な視野で環境・社会課題解決に向けた取り組みを強化しました。

具体的には、「緑あふれるクリーンな日常を世界に。」というコンセプトのもと、既存の廃棄物処理事業の延長線上ではなく、2030年以降に向けて設定した目標をもとに各種サービスの向上と新規事業への挑戦に取り組んでいます。

その過程で「SDGsは他者と協働し、社会への普及に貢献することで真に達成できる」と考えました。そこで始めたのが、自社の取り組みを広め、企業等の長期的なSDGs経営に向けて伴走していくSDGs実装支援サービスです。


―どのような支援をされているのか教えてください。



SDGsの企業行動指針である「SDGコンパス」(※1)をベースに、5つあるステップごとにどのように取り組んでいくべきか、企業様の状況に応じて各種サポートを行っています。

教育機関やNPO団体にも、SDGsの概念や取り組み方を楽しく学べる「SDGsカードゲームセミナー」や行動変容につながるようなワークショップ等のサービスを提供しています。

※1:GRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)、国連グローバル・コンパクト及びWBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)の発行物。

SDGs実装支援の5つのステップ。まずは「理解すること」から



―ステップ1~5でそれぞれ何を支援されているのか、詳しくご紹介をお願いします。

まずステップ1は、「SDGsを理解する」ことを目的とし、基礎と応用の2段階でワークショップを行います。基礎のワークショップでは、SDGsカードゲームと振り返りを通じて世界の動向や経済・環境・社会のつながりを理解し、SDGsの全体像を把握することができます。


―どのようなカードゲームなのでしょうか。

当社では、一般社団法人イマココラボが提供する「2030 SDGs(ニイゼロサンゼロ エスディージーズ)」というカードゲームを使用しています。これはSDGsの17の目標を達成するために現在から2030年までの道のりを体験するゲームで、SDGsが世界に必要な理由や、SDGsによる変化や可能性を体験的に理解できます。

セミナーを担当するのは、当社経営企画室の社員です。上記カードゲームのファシリテーター資格、サスティナ経営検定、炭素会計アドバイザー等、サスティナビリティに関する幅広い知識を備えた担当者が対応しています。

企業様からは新人研修やSDGsの社内浸透目的でこのカードゲームセミナーの依頼を受けることが多く、学校やNPOの皆様からはまずゲームを取り入れて今後の生活に活かしたいという依頼が多いです。

「曖昧であったSDGsの概念がゲームで楽しく、具体的に学べた」「他部署の社員と意見交換する機会となって良かった」など好評をいただいています。


―ステップ1の応用編では何をするのでしょうか。

応用編では、SDGsがビジネスに求める役割と責任を学んでいただきます。SDGsコンパスの全体像、事業とSDGsの関係性、SDGsウォッシュ(※2)、具体的な実装について、参考となる手法や知識を解説する段階です。

「SDGs推進室」などの部署が設けられている企業様であれば、その中心的な社員の方が応用編に参加されるケースが多いです。「SDGsに向けて具体的な道筋を確認することができた」「SDGsと経営のつながりを考えるきっかけになった」といった、SDGsを理解した上で進むべき方向性を見出せたことを示す感想をいただいています。

※2:SDGs貢献に向けて取り組みをしていると謳いながら、実態が伴わないビジネスを展開すること。

優先課題の決定と目標設定が重要



―ステップ2以降はどのように進めていくのでしょうか。

ステップ2は、お客様にとっての優先課題を決定する支援を行います。さまざまな事業がある中で、今後何に対して優先的に取り組んでいくかを検討するステップです。

マクロ環境分析(自社を取り巻く外部環境要因)を勘案しながら、自社の基本方針や事業計画といった内部要因を通じて、重点的に取り組んでいくテーマを洗い出す作業のお手伝いをさせていただきます。

このステップ2では、総合的に既存事業のレビュー分析をした上で、SDGsの17のゴールとターゲットを紐付けします。既存事業を単純に17のゴールに紐付けるのではなく、外部から求められていることと内部の優先順位を総合的に鑑みて課題を決定し、関連性を分析するのがポイントです。

ステップ3では、具体的な数値目標として重要業績評価指標(KPI)の設定を支援します。お客様からは「既存事業の洗い出しと現在地の把握ができた」「会社のありたい姿を可視化することができて納得した」といったお声をいただいています。

ステップ1の「SDGsを理解する」は、カードゲームなどを通じてすぐに達成できますが、その後の具体的なアクションにつながるステップ2以降の支援がとても重要だと当社は考えています。お客様の状況ごとにサービス内容をカスタマイズし、提案しているステップです。


―カスタマイズの例をお聞かせください。

例えば「SBT(※3)認証を取得したい」というお客様には、脱炭素を進めるためにまずCO2排出量の可視化をサポートさせていただいております。関係部署が複数ある場合には、取り組みのヒアリングを部署ごとに行い、課題解決に向けてフィードバックさせていただくといったケースがあります。

※3:パリ協定が求める水準と整合した、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標。
(環境省:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SBT_syousai_all_20221201.pdf

取り組んで終了ではなく、情報発信も支援する



―取り組むべき優先課題と目標を決めた後は、何を支援されるのでしょうか。

ステップ4では、中期経営計画へのSDGs組み込み支援と新規事業サポートを行います。ステップ3で策定した目標をお客様の経営理念・ビジョンに一致させ、具体的に目標を達成するための動きを一緒に検討します。

ステップ3で策定した目標を達成するために、環境的な側面から具体的な改善提案や支援をさせていただくことも可能です。具体例として、より環境付加価値のある廃棄物処理を実現するために、当社へ新規処理依頼をしてくださったクライアントもいらっしゃいます。

また、策定した目標を全社に浸透させることが重要ですので、その土台作りのために再度カードゲームを実施し、企業の今後のSDGs実装計画も踏まえて解説をする社内セミナーを行うケースもあります。


―「SDGsを理解する」とはまた別の目的で、同じカードゲームを使用し、より深いSDGsへの理解と具体的なアクションに繋げていく効果があるようですね。最終ステップでは何を支援されていますか?

SDGsに取り組むうえで推奨されているのは、設定した目標に関する取り組みの進捗状況を定期的に社内外へ報告すること、コミュニケーションを図ることです。そこで、ステップ5ではサステナビリティレポート発刊や各種広報物、アワード申請のサポートを行っています。

SDGsは取り組みをして終了ではなく、積極的な情報発信をすることで企業価値が向上し、売上の向上や長期的な企業経営の実現につながります。その支援に対して「社内浸透ツールとなった、対外的な情報発信が可能になり、取引先への企業紹介がしやすくなった」といったお声をいただくのは嬉しいですね。

各ステップについてご紹介しましたが、取組みの具体的な内容は、弊社のサスティナビリティ報告書(※4)をご覧いただくと、イメージをつかんでいただきやすいかと思います。ステップごとの該当ページを、ご参照いただければと思います。

※4:(KAYAMAサスティナビリティ報告:https://www.kayama-k.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/02/sustainabilityreport2022.pdf
ステップ2~3…P7~12
ステップ4…P31
ステップ5…サスティナビリティ報告書全体の監修


―SDGsと事業の紐づけ、優先課題の決定、そして目標設定が特に重要とのことでした。伴走期間はどのくらいでしょうか。

ステップ1のみの依頼であれば短期間ですが、ステップ2及び3までのご支援であれば、数か月、ステップ4の社内浸透やステップ5のレポート作成までの依頼をいただく企業様の場合は、年単位のお付き合いとなります。一度ステップ1~5までを終えても、2年目に再度レポート作成で監修して欲しい等の依頼をいただくことも多いです。


―主にどのような業界・業種からの依頼がありますか?

企業様だと、同業他社様や元々廃棄物処理でお取引のあるお客様から依頼をいただくことが多いです。当社とお取引のある金融機関様からのご紹介で様々な業種の企業様から依頼をいただくこともあります。

新たなビジネスモデルの構築も視野に。さらなる貢献を目指して



―SDGs実装支援をされた企業様からの反響を改めてご紹介ください。

コンサルティング企業ではなく一産業廃棄物処理企業である当社がSDGs実装を具体的に実現できていることに注目されて「自社でも始められるのではないかと思った」と依頼をいただけることが多いです。

「自社の状況に応じて細かい相談も乗ってくれるため、一緒にSDGs実装を進めている実感がある」というお声をいただくこともあります。


―今後の展望をお聞かせください。

社会情勢やSDGsの動向は日々変化しています。今後、このSDGs実装支援サービスをより多くの企業様、団体様に活用いただけることを目標にしながら、内容を常にアップデートして情報発信と実装への導きを行っていければと考えています。

具体的な目標値としては、2030年までに、SDGsに関するセミナーや普及イベントを累計300件開催することを目指しています。

また、2050年以降にかけて、ステークホルダー様と対話をしながら新しいビジネスモデルを共同で構築していきたいと考えています。実現すれば、社会課題の解決に向けて貢献できることがより増えていくのではないかと考えているからです。


―最後に、読者の皆様へメッセージをお願いします。

SDGsは、持続可能な社会構築のために目標を定め、環境問題や社会課題をみんなで解決していく考え方です。企業だけでなく、個人の生活や学校生活、団体活動にも生かすことができます。

当社はどのような立場の方でもSDGs実装のために伴走支援をさせていただくことが可能ですので、困りごとがありましたらお気軽にお問い合わせをいただけますと幸いです。


―本日はお話いただき、ありがとうございました。