「技術者の育成と「技術連邦」構築に注力。マイスターエンジニアリンググループにインタビュー」分煙対策(喫煙ブース)・空気清浄ガイド

分煙対策(喫煙ブース)・空気清浄ガイド

技術者の育成と「技術連邦」構築に注力。マイスターエンジニアリンググループにインタビュー

クリーンエア・スカンジナビアは、SDGsに関する取り組みとして、サステイナブル・カンパニーを目指しています。

持続可能な発展への貢献。環境負荷削減のための責任ある行動。そして自社のバリューチェーンにおいて人々へのポジティブな効果を高めていくこと。私たちクリーンエアでは、こうした活動に取り組んで参ります。

この記事では、同様にSDGsの取り組みを行っている企業をインタビュー形式で紹介します。

マイスターエンジニアリンググループは、日本の産業・社会インフラを支える技術サービス集団です。重電機器や都市土木等の超重要インフラの改修・メンテナンスや、半導体、自動車、産業機械など多様な分野への設計・開発・フィールドエンジニアリングサービスを提供しています。

メンテナンス技術に強みをもつ同グループのうちの一社である株式会社マイスターエンジニアリングは、独自の調査により、情報通信、鉄道、電気などの「超重要インフラ」※1のメンテナンス人材不足が深刻化していくという発表を行いました。

この課題に立ち向かい、サステイナブルな社会を実現するため、技術者の育成と中小企業の事業承継による「技術連邦」の構築に注力し、業界全体へとその動きを広げようとしています。

今回は、株式会社マイスターエンジニアリング 人財開発部部長の秋元 章吾さんに詳しくお話を伺いました。

技術で、社会を支えるマイスターエンジニアリンググループ




―本日はよろしくお願いします。まず、御社の事業内容について教えてください。

当グループは、1974年に超高層ホテルの電気設備管理業務受託を起点に創業し、現在グループとして製造業向けソリューションとインフラ向けソリューションの2領域で事業を展開しています。

私たちは「技術で、社会を支える」という志のもと、日本の製造業・インフラを、技術力をもつ人材によって支え、日々の生活を守りつつ産業の発展に貢献することを使命としています。

製造業には、半導体や自動車など様々な領域がありますが、これらのメーカーに対して、技術派遣あるいは技術請負と呼ばれる形で、技術力を提供するのが前者の製造業向けソリューションです。

後者のインフラ向けソリューションでは、電気設備、土木、防災といったライフライン領域のメンテナンスや工事、そしてプラントの設計やメンテナンスを行っています。



また特にこのインフラ向けソリューションにおいて、様々な強みを持った会社にマイスターエンジニアリンググループへ加わっていただいており、「技術連邦」として規模を拡大しています。

どちらのソリューションにも共通するのは、メンテナンスに力を入れている点です。様々な設備が次々と造られるなか、それらを維持管理するメンテナンス技術者の存在が非常に重要となっており、当社にも多くの技術者が在籍しています。


―御社名にはどのような由来がありますか?

「マイスターエンジニアリング」には複数の意味が込められています。まず、「マイスター」はドイツ語で、卓越した技術者、巨匠といった意味の単語です。

また、本来のドイツ語表記だとmeisterという綴りですが、当社ではmystarとしており、一人ひとりが主体性を持った技術者として、「マイ(自分の)スター(星)」になってほしいという意味を込めています。

インフラのメンテナンスが危機に瀕する「2030年クライシス」




―SDGsへの貢献に関して、御社の取り組みを教えてください。

当グループではグループ経営における中核戦略として「メンテナンス人材の門戸開放と科学的教育」、「業界の現場 DX 推進」、「技術サービス連邦化」の推進に取り組んでいます。

その背景は、当社が行った独自の調査により浮き彫りになった社会課題です。

鉄道や電気など国内の「超重要インフラ」を支える企業や人材を取り巻く環境について調査したところ、2030年までに「超重要インフラ」のメンテナンスが重大な危機に瀕するということが分かりました。

メンテナンスが必要な設備に対して 2030年時点で約 30%(21万人)、2045 年時点で約 50%(39万人)の技術者が不足し、超重要インフラの維持は困難に陥る、と推計されます。私たちはこれを「2030年クライシス」と呼んでいます。

電動化が進み、設備が増えている一方で、設備をメンテナンスできるエンジニアの数は労働人口が減少するスピード以上に減っています。

このまま減少が続くと、例えば十分なメンテナンスが施されないために変電所で火災が起きやすくなったり、土木領域では橋やトンネルが補修されないままになってしまったりするという問題が起こる可能性もあります。

SDGs目標「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」には「すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する」というターゲットがあります。

しかし、「2030年クライシス」が実際に起こると、人命にかかわり、産業の衰退にもつながってしまいます。

そのため、当グループは文系学生や未経験者、女性などこれまで就職先として技術者を選択しにくかった層への働きかけと、理論に基づいた教育を行う「門戸開放と科学的教育」を行っています。

また、メンテナンス業務にデジタル化を導入する「業界の現場DX 推進」、技術サービスに従事する会社にM&Aを通じグループの仲間として参画いただき、幅広い現場での技術提供体制を整える「技術サービス連邦化」の推進も始めました。

社会を支える技術者を増やすため、門戸開放と育成に注力




―3つの施策について、詳しくお伺いします。まず「門戸開放と科学的教育」は、どのような取り組みなのでしょうか。

SDGsには「8.働きがいも経済成長も」という目標があります。当グループでは、このうち「働きがいのある人間らしい仕事を増やしたり、会社を始めたり、新しいことを始めたりすることを助ける政策をすすめる。特に、中小規模の会社の設立や成長を応援する」というターゲットにかかわる取り組みを行っています。

超重要インフラの危機に立ち向かい、社会を支えていくには、技術者への門戸を未経験の方などにも開放していくことが必要だと考えました。

そして、技術者として一人前になっていただくためには「背中を見て学べ」という教え方ではなく、理論に基づいて長期間にわたる教育をしながら伸ばしていくことも重要です。

新入社員研修などでは、マイスターエンジニアリンググループ共通の人財育成拠点として大規模研修施設「ME技術センター」(千葉県佐倉市)を活用しています。ここには様々な実機があり、個社では実現しにくい実践的な研修を構築できます。

また、入社時だけでなく、配属後に技術者として成長できる研修も必要だと感じており、技術者として成長が早い人の特徴から、習得すべき「肝」を見出し言語化したプログラムを、一人ひとりに実践してもらうという研修を段階的に開始しています。

3ヶ月単位でどこまで習得するべきかという目標を設定し、2年間をひとつの教育期間としています。


―何を習得するのか、明確にすることがポイントなのですね。

従来は技術者のスキルを言語化することが難しかったと思いますが、言語化することで、育成される側は学ぶべきことが分かりますし、育成する側も、何を教えればいいか分かります。

このように、教育されるべき知識、スキル、マインドを可視化して、座学によって補いながらOJTの中でじっくり育てていくことを重要視しています。当社が「フィールド&フォーラム型の研修」と呼ぶ取り組みです。

また、育成者に対するアプローチも大切にしています。教育プログラムを用意するだけでなく、育成する側が適切なマインドセットとスキルセットを持っていることも重要だからです。

そこで、「教える際に内容をどのように分解するか」、「どのようにフィードバックをすると相手が受けとめやすいか」といった実践的な視点で育成者も学べるような研修も行っています。

現場DX 推進と技術サービス連邦化にも注力

―「業界の現場DX推進」と「技術サービス連邦化」についても、詳しくお聞かせください。

現場のメンテナンス情報は紙の資料へ記録するなど、アナログな方法で管理されていることも多く、情報収集や計画、点検に工数がかかってしまう可能性もあります。

そこで「プラント」領域においてですが、当社のグループ会社が、DX化を進めるためのプロダクトを新規事業として立ち上げ、提供を開始しています。

3つ目の「技術サービス連邦化」は、マイスターエンジニアリンググループに加わっていただき、ともに繁栄することを目指す取り組みです。

マイスターエンジニアリンググループへ加わっていただいた各社は、独立し、自立した事業を行っていただきながら、グループ間の横のつながりを活用して新たな事業を計画していただくことも可能です。

また、採用・育成などの管理業務は当社がサポートすることで、より各社が本業である技術サービスに専念できる環境を整備し、管理業務の効率化を目指します。

これは、SDGsゴールのひとつである「商品やサービスの価値をより高める産業や、労働集約型の産業を中心に、多様化、技術の向上、イノベーションを通じて、経済の生産性をあげる」にもつながると考えています。

株式を非公開化することで社員ファーストに注力できる環境を整備。安定とステップアップを支援




―御社は、2020年3月をもって東京証券取引所への株式上場を廃止されています。その理由を教えていただけますでしょうか。

当社はもともと東証二部に上場していた上場企業でした。しかし、上場していると「株主ファースト」とならざるをえず、短期的な利益や配当の増加のために経営を考えなくてはなりません。

当社は、長期目線で事業運営による社会への価値提供が必須だと考え、現社長の平野が主導し2020年にMBO(経営陣による株式買収)を行い、株式を非公開化しました。

これを「第二の創業」と位置づけ、「社員ファースト」の経営を目指しています。

メーカーにとって重要なのが製品だとしたら、当社が提供する技術サービスの核になるのは「人」です。

社員がやりがいを持ち、成長すれば収入は上がり、そのような人材が会社に定着すれば、事業を拡大していけるでしょう。社員ファーストを追求するのは、社員のためにも会社のためにも正しいことだと考えています。


―実際に、「社員ファースト」を目指して取り組まれていることがあればお聞かせください。

当社が実践する「社員ファースト」は、福利厚生を充実させたり、給与を上げたりすることだけではなく、社員が主体的にキャリアを切り拓いていけるようにすることです。

今の仕事に安心して打ち込める状態で、さらに高い技術を身に着けられるよう、研修などを実施して支援しています。

また、当グループでは例えば「プラントドクター」と呼ばれる職種など、技術の専門性が高い仕事を事業としてもつ会社をグループに迎えています。グループ公募制度も実施しており、個人の選択によって様々なキャリアパスに挑戦できるようにもしています。

更に技術職だけでのキャリアではなく、例えば技術職から採用チームに入った社員もおり、今後の活躍が期待されているところです。

ほかにも、当社では、借り上げ社宅に住む場合は家賃の自己負担額が2万円になる制度や、毎月3,500円分の食事代補助を支給するなど、様々な形で安定して働くための支えになる衣食住のサポートを拡充しています。

また、人事制度を改定し、給与水準の引き上げに向けても動いているところです。

採用者数とグループ会社の増加に見る、取り組みへの共感

―これまでのお取り組みを振り返って、どのような成果や変化がありましたか?

当社の取り組みについて情報発信を積極的に行っていることもあり、5年前は年間で数十人だった中途採用者数が、2024年はグループ合計で約200人にまで増加しました。

グループ会社の数も、この3~4年で増えており、多い時には年間5~6社程度の会社がグループに加わっています。


―注力されている育成について、反響がありましたら教えてください。

育成者を育成する取り組みの中で、「教え方研修」に対して特に反響が大きく、「非常に勉強になった」という社員や、「試行錯誤を経て、自分がトライしてきたことが肯定されたようでうれしかった」と涙する社員などがいたそうです。

また、取引先企業の皆様にも研修を提供しており、好評の声や継続実施の依頼をいただいています。

技術と育成のノウハウが強み。社会課題と向き合う企業連携を目指して




―今後の展望をお聞かせください。

圧倒的な技術者不足による「2030年クライシス」は個社で解決できる課題ではないため、私たちが常に意識しているのは「共創」です。

会社の枠を超えた「技術連邦」となるべく、同じ志を持つ会社にグループへ加わっていただくこと。そして、上下関係ではなく、支え合いながら、互いの事業課題を解決し、社会課題の解決につなげること。

この動きをいかに拡大していけるかが、今後の重要なポイントになると考えています。

また、当社がもうひとつ社会に対して提供できるのは、今回ご紹介したように、技術者による育成のノウハウです。業界全体の繁栄につながるよう、共創型の「人材育成オープンプラットフォーマー」になることを目指して挑戦を続けてまいります。


―最後に、サステイナブルな社会の実現に関心がある方へメッセージをお願いします。

インフラ業界だけではなく、ほかの業界においても、企業間での連携が必要だと思います。自社最適から全社最適へ、そして世界最適を目指して、ぜひ一緒に社会課題の解決に取り組んでいけたらと思います。


―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

※1 超重要インフラ:政府定義の「重要インフラ分野」14領域について、他で代替することが困難であり、機能が停止もしくは低下すると社会に大きな混乱を招くと見込まれることから、当社では“超重要インフラ”という名称を使用しています。当社グループ各社の技術者は現場で超重要インフラの機能維持・安定稼働に資するメンテナンス業務に従事しております。