嫌煙権とは?受動喫煙を防ぐための現代のルール
近年、日本では人々の健康を守る取り組みの一環として、受動喫煙を防ぐためのルールづくりが進められています。そのルールを把握するにあたって、必ず押さえておきたい知識が「嫌煙権」です。
特に企業は施設やサービスの性質上、受動喫煙への対策が求められているケースも多いので、きちんと理解しておかなければ、思わぬトラブルが発生するかもしれません。
そこで今回は、嫌煙権の概要や動向、分煙の必要性について解説します。
嫌煙権とは
嫌煙とは、タバコから発生する煙による害を嫌うことを意味します。それに関連して主張されているものが「嫌煙権」です。
定義はさまざまですが、一般的に下記のような権利と提唱されています。
・タバコの煙(副流煙)で汚されていない、清潔・良質な空気を吸うことができる
・自分の健康を守るため、受動喫煙を強いられる状況に異議を唱えられる
タバコの煙にはニコチンやタール、一酸化炭素といった有害物質が含まれています。受動喫煙が問題視されている最たる理由は、喫煙者が肺に吸い込む主流煙より、タバコの点火部から発生する副流煙のほうが有害物質を多く含んでいるからです。
実際、受動喫煙のリスクは科学的な研究でも指摘されており、肺がん、虚血性心疾患、ぜんそく、脳卒中など、さまざまな健康被害を引き起こしかねないといわれています。さらに、子どもなら呼吸器疾患や虫歯、妊婦なら早産のリスクも上がるといわれているため、特に注意しなければなりません。
また、最近は加熱式タバコを吸う方も増えています。加熱式タバコは副流煙がほとんど発生しませんが、代わりに有害物質を含むエアロゾルが出されるため、健康に悪影響を与える要因は消失しません。
紙巻タバコ・加熱式タバコを問わず、嫌煙権は適用されると認識しておきましょう。
◇喫煙権とは
嫌煙権がある一方、喫煙者のための「喫煙権」もあります。これは読んで字のごとく、タバコを吸う権利のことです。
世間が禁煙の取り組みを進めていることをきっかけに、喫煙者の権利も保障すべきという意見が表出した結果、喫煙権が提唱されるようになりました。
◇嫌煙権や喫煙権は法律で決められている?
嫌煙権・喫煙権はどちらも法律で規定されていないので、必ずしも保障されるわけではありません。しかし、基本的人権の尊重や健康への悪影響を踏まえて、実際に訴訟が起こったケース(判例)もあります。
法律で明確にルール化されていないとはいえ、非喫煙者・喫煙者が共存するためには、両方の権利に対して配慮することが大切です。
また、2020年4月1日施行の改正健康増進法では、望まない受動喫煙を防ぐための対策が義務づけられたので、間接的ながら嫌煙権が守られるようになったといえます。
嫌煙に関する動向
嫌煙権という言葉が広まったきっかけは、1978年2月に「嫌煙権確立を目指す人びとの会」が発足したことです。
同集会は受動喫煙から人々を守るために、下記の3つの権利を掲げています。
1.タバコの煙によって汚染されていない綺麗な空気を吸うことができる権利
2.穏やかであってもはっきりとタバコの煙が不快であると伝えることができる権利
3.公共の場所での喫煙の制限を求めるため会社に働きかけることができる権利
非喫煙者が副流煙によって健康被害を受けることは基本的人権の侵害であり、呼吸器疾患を抱える方にとっては生命も脅かすといった理由から、嫌煙権運動は人権運動の一種として認められています。
◇嫌煙の時代背景
そもそも嫌煙権運動が始まった1970年代は、現代ほど禁煙・分煙が進んでおらず、公共の場でも盛んに喫煙が行なわれていました。例えば、新幹線は今こそ全面禁煙が当たり前ですが、一昔前まで車両内でタバコを吸う方を見かけることは珍しくなく、1970年代には禁煙車が1両しかない新幹線も存在していました。
上記のような状況を改善するため、集会に参加した有志の方々は1980年4月、国鉄や日本専売公社に対し「すべての列車の半数以上を禁煙車に」という訴えを起こしました。これは「嫌煙権訴訟」と呼ばれています。
この訴訟は約7年にわたって続き、結果として「車両内の受動喫煙は受忍限度内」と訴えは棄却されました。しかし、訴訟をきっかけにタバコの有害性が見直され、喫煙の規制が進むこととなったのです。
特に2000年以降は、受動喫煙防止に対する社会的意識が高まっており、病院・学校・交通機関・飲食店など、さまざまな場所で禁煙・分煙の取り組みが進められています。
受動喫煙を防ぐには分煙が大切
タバコの有害性や病気の発症リスク向上に関する情報が普及したこともあり、ここ数年の成人喫煙率は減少傾向にあります。しかし、今でも少なくない愛煙家の存在も無視できません。
嫌煙権・喫煙権の両方を守りながら受動喫煙を防ぐためには、何より「分煙」が大切です。単に全面禁煙とするのではなく、可能な範囲で喫煙スペースなどを設置することにより、お互いが快適に過ごせる環境を作る必要があります。
特に企業や病院については、改正健康増進法をもとに受動喫煙防止対策を実施しなければなりません。マナーではなくルールとして義務化されているため、ルールに違反した場合には通報の対象となり、何らかの罰則が科せられる可能性もあります。
また、改正健康増進法にともない、2020年1月6日よりハローワークの求人票に受動喫煙防止対策の欄が追加されました。就職先・転職先を選ぶ際のポイントとなるため、具体的な取り組みを明示することが大切です。
参考:厚生労働省『2020年1月6日から 求人票と公開方法が変わります』
◇改正健康増進法のルール
改正健康増進法のルールは、施設の種別によって変わります。施設ごとのおおまかなルールは、以下のとおりです。
・学校・病院・行政機関
学校・病院・行政機関といった公共性の高い第一種施設は、原則として「敷地内禁煙」です。ただし、一定の条件を満たせば、敷地内の屋外に喫煙所を設置することが認められます。・事業所・工場・ホテル
事業所・工場・ホテルといった第二種施設は「原則屋内禁煙」ですが、一定の条件を満たすことで屋内に喫煙専用室を、もしくは屋外に喫煙所を設置することが可能です。・飲食店
飲食店も第二種施設に該当するので「原則屋内禁煙」ですが、経営規模や客席面積によっては経過措置が適用されます。その場合、飲食ができる喫煙可能室を設置したり、全席喫煙席にしたりすることが可能です。関連記事:職場で受動喫煙防止法を守らないと通報される?企業がとるべき対策は
それぞれの立場を尊重し喫煙専用室を設置しよう
タバコの煙を気にせず過ごせるよう分煙に取り組む場合、きちんと区画された喫煙専用室の設置が求められます。しかし、施設によっては新しい部屋の確保や、大規模な設営工事が必要になるため、なかなか設置できないかもしれません。また、法律要件をクリアした環境の維持や、法律要件のクリアを証明するレポート作成にも手間を要します。
受動喫煙に関する対策については、厚生労働省が公表している内容を参照ください。
参考:厚生労働省「受動喫煙対策」
もし、喫煙専用室を設置できない場合、代替手段として分煙機がおすすめです。特にクリーンエア・スカンジナビアの分煙キャビンは、100V電源と空きスペースがあれば、大がかりな工事なしで屋内のどこにでも設置できます。
さらに、優れた浄化機能を有することも特長です。ニコチンやタールといった有害物質はもちろん、タバコの煙やニオイも徹底的に浄化するので、受動喫煙のリスクも大きく低減できます。
また、専門スタッフによる定期メンテナンスを行なっているため、いつでも快適な空気環境を作り出せることも見逃せません。法律要件をクリアしていることを証明するレポート対応もクリーンエア・スカンジナビアが代行しますので、手間が省けます。
詳しくはこちら
まとめ
健康を守ることにつながる嫌煙権は、非喫煙者にとって大切な権利です。しかし、喫煙者との良好な関係を築くためには、喫煙権も尊重したいところです。
これらの権利を認める法律は存在しませんが、改正健康増進法による受動喫煙防止対策が推進されているため、各ルールをしっかり把握しておきましょう。
また、分煙機の設置もぜひ検討してみてください。
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