たばこ休憩に非喫煙者は不満の声が!喫煙者の労働時間を考える
勤務中に喫煙をするたばこ休憩は、喫煙者にとって一般的な行為かもしれません。しかし、非喫煙者にたばこ休憩の概念はなく、「喫煙者だけ休憩できるのは不公平では」といった声も挙がっています。
本記事では、勤務中における喫煙時間の扱い方や喫煙をめぐる裁判の事例、喫煙者と非喫煙者が公平に働くためのポイントを紹介します。
喫煙時間は「勤務中」なのか「休憩中」か
たばこ休憩が問題視されている主な理由は、喫煙時間が「勤務中」と「休憩中」のどちらに該当するのかという部分にあります。
実際に手を動かしながら喫煙している場合は、勤務中と考えて良いかもしれません。しかし、たばこの規制が進んでいる昨今、職場全体が禁煙になっているケースがほとんどです。多くの場合、喫煙者はたばこ休憩のたびに離席し、喫煙所まで足を運んで喫煙します。
喫煙に要する時間は喫煙所の場所やたばこの本数によって異なりますが、少なくとも5〜10分程度はかかるでしょう。何度も喫煙するような場合は、まとまった時間を喫煙に費やすことになります。
こうした喫煙時間は果たして勤務時間といえるのかどうか、社会的な問題として良く話題に挙がります。
非喫煙者からは不満の声も
非喫煙者には、喫煙者のたばこ休憩に対して疑問を抱いている方も少なくありません。そもそも非喫煙者はたばこ休憩がないため、勤務中の休憩時間が喫煙者に比べて少ないことになります。
とくに喫煙時間が勤務中として扱われている場合は、不公平だと感じる非喫煙者がほとんどでしょう。
勤務時間における喫煙をめぐる裁判
喫煙時間の扱い方に関する問題は、過去に裁判にまで発展したこともあります。裁判に発展した事例はいくつかあるものの、状況や事情によって異なる判決が下されました。
以下では、喫煙時間が休憩中とみなされた事例を紹介します。
「休憩中」にあたる場合の事例
喫煙が勤務中にあたるとする場合もあれば、休憩時間として認められる場合もあります。
2014年8月26日の東京地方裁判所判決は、喫煙のために店舗から離れ、戻ってくるまでに10分前後の時間がかかっていたことから、「喫煙中は労働から解放されていた」とみなされ、喫煙が休憩にあたると判断されました。
原告らは、昼食休憩のほかに、所定勤務時間中に、1日 4、5 回以上、勤務していた店舗を出て、所定の喫煙場所まで行って喫煙していたこと、原告らは喫煙のために一度店舗を出ると、戻るまでに10分前後を要していたことが多かったことが認められる。そして、労基法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいうと解すべきところ、喫煙場所が勤務店舗から離れていることや喫煙のための時間を考慮すると、原告らが喫煙場所までの往復に要する時間及び喫煙している時間は、被告の指揮命令下から脱していたと評価するのが相当
出典:労判1103号86頁
喫煙時間が労働時間にあたるかどうかは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれているか否かで決まります。喫煙時間が勤務中にあたるかどうかは、会社やその場の状況を考慮したうえで慎重に判断する必要があります。
喫煙者と非喫煙者が公平に働くためには
喫煙者と非喫煙者が公平に働くには、お互いに不満が出ないようなルールの制定が必要です。ここでは、喫煙者と非喫煙者が公平に働くためのルールを決めるうえで、意識したいポイントを紹介します。
喫煙時間の賃金カットはできない
非喫煙者の不満を解消する手段として、喫煙時間の賃金カットを考えるかもしれません。しかし、喫煙時間の賃金カットを実施することは難しいのが実情です。
労働基準法では、賃金は原則として労働時間に対して支払うものとされています。労働時間にあたるかどうかは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれているか否かで決まります。
喫煙中は業務を行っていないものの、使用者の指示があったときや、緊急の作業が発生したときはすぐに業務に戻らなければいけないのが一般的です。このような状況は労働から完全に解放されているとはいえず、喫煙中も労働時間であるとみなされる場合があります。
そのため、喫煙時間の賃金カットをするには、喫煙時間を労働から完全に解放された時間としなければいけません。しかし、労働から完全に解放された時間を喫煙するたびに設けるのは難しく、実現するのは現実的ではありません。
非喫煙者に喫煙時間同等の休憩を付与する
喫煙に関する不平不満をなくすためには、非喫煙者に喫煙時間同等の休憩を付与することが効果的です。平等に休憩を設ければ、休憩中に喫煙者は喫煙できる一方で、非喫煙者も自分の好きなように過ごせます。
また、こまめな休憩を付与することで、従業員全体の集中力やモチベーション低下を防ぎやすくなります。
喫煙時間に関するルールを作る
勤務中の喫煙を認める場合は、喫煙時間に関するルールを作ることも1つの方法です。
例えば、「たばこ休憩は1日◯回、○分まで」のように明確なルールを作ったうえで周知すると、喫煙時間の長さが原因で生じる不満を減らしやすくなります。
まとめ
たばこ休憩に対する非喫煙者の不満を解消するには、喫煙に関するルールを決めることが大切です。たばこ休憩の存在が喫煙者の特権とならないよう、従業員全員が公平に過ごせるような労働環境を整えましょう。
■監修者情報
近藤敬(こんどうたかし)
保有資格 弁護士(東京弁護士会所属:レイ法律事務所)、労働法務士、働き方マネージャー、ハラスメントマネージャーⅠ種、認定ハラスメント相談員Ⅰ種
プロフィール:
東京地方裁判所労働専門部に6年半在籍し、裁判所書記官として法令及び判例の調査その他必要な調査を行いつつ裁判官を補助してきた経験を持つ。裁判所在職中に司法試験に合格し弁護士登録後は、経験を活かし労働問題特に職場でのハラスメントトラブル解決に重点的に取り組んでいる。
HP:監修者様HPのURL
https://rei-law.com/practice/work_trouble
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